00.こうなるまでの話 ページ1
「なんか最近、Aといても楽しくないんだよね。別れよ」
付き合い始めてから約1年。五条くんのその一言によって私達の関係は終わった。……終わったはずだった。
付き合い始める前も付き合ってからもずっと、私の一方的な片想いのような状態だった。五条くんは私のことを好きだから付き合ってくれてたわけじゃない。だから、別れてからも当然ただの友達に戻れると疑わなかったんだ。
別れてから数ヶ月後。彼がこんな風になるなんて、思わなかった。
五条くんと別れてから、良い雰囲気になっていた男の子とデートをした帰り道。きっと今から告白される____、そんな時にどこからともなく現れた五条くんに腕を掴んで拐われて。抵抗する間も無く、彼の術式でトんで呪術高専に戻ってきた。
「五条くん……?」
振り向いた彼は、どこか悔しさを滲ませた瞳を葛藤するように揺らして、おそるおそる小さく開けた口を一度閉じた。その間も腕は掴まれたまま。一体どうしたものかと辛抱強く待てば、微かに震えた蚊の鳴くような声が鼓膜を揺らした。
「……、あの男と付き合うの」
「付き合う、かも?」
「______」
「え?なに?」
声が小さすぎて聞き取れなかったので、優しく聞き返す。五条くんはキュッと唇を引き結んだ後、僅かに紅く染めた頬と真剣な瞳でもう一度訴えた。
「嫌だ。あんな奴と付き合うなよ」
「あんな奴、なんて言わないでよ。素敵な人だもの」
五条くんが訴えた言葉の意味よりも、あんな奴と言われたことがスルーできなかった。そんな私の心情に触れた五条くんは、切なげに眉を寄せる。
「……っ、何で今あいつを庇うんだよ」
「事実を言っただけだから」
「……俺にしろ」
「…。」
痛みを隠せない表情で言った五条くんに、思わず黙り込んでしまう。今、なんて……。だってそもそも別れよって言い出したのは五条くんの方で、五条くんは付き合ってても私のこと好きじゃなくて。……なのに、どうして今になって。
「…。俺に、してよ」
「……なん、で」
必死で手を伸ばしているような、縋りつく声だった。言葉が浮かばず呆然としていれば静かに、もう離さないと言わんばかりに抱き締められた。
「……すき。Aが、好きなんだ」
私が選ぶ返事は______。
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雨宮 - こういうオリ主人間味があって好きです、面白かったです。 (12月6日 19時) (レス) @page8 id: ec3fa44d4f (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - ゆずなさん» ありがとうございます!更新は不定期ですが、少しずつ頑張っていきます。 (11月3日 18時) (レス) id: fadfb7919a (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - あやさん» はじめまして。恋多き女故に終わった恋に執着しない夢主を五条はどうするのか…。お楽しみいただけると幸いです。 (11月3日 18時) (レス) id: fadfb7919a (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - 霧雨 音葉さん» 初コメありがとうございます。素直になれない五条を書くの、私自身も楽しんでいます。笑 (11月3日 18時) (レス) id: fadfb7919a (このIDを非表示/違反報告)
ゆずな - この作品めっちゃ好きです!続き待ってます( *´꒳`* ) (10月31日 22時) (レス) @page7 id: f39121074c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おもち | 作成日時:2023年10月18日 21時