【wrwrd】せんせー、【ut】 (ページ2)

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その1 ページ2

まだ昇りきっていない太陽を背に、自転車を全力で漕ぐ。頑張ってセットした前髪もぱあになっちゃうけど、そんなこと気にしていられない。
速く。もっともっと速く。そんな気持ちを嘲笑うかのような赤信号をひと睨み。

指定の駐輪場に自転車を置いて、荒れた髪を手ぐししながら靴を履き替えて、全速力で階段を上る。
結局髪の毛はボサボサになっちゃったから、教室の前でまた整える。
軽く深呼吸をして高鳴る胸を抑えながら扉に手をかける。毎朝のことだけど、未だにドキドキしちゃうからいつになったら慣れるのかな、なんて思うけど、きっとそれはうんと先のことなんだろうな。

「っ、せんせー、おはようございます！」

ふわり。
軽いタバコの香りが鼻をくすぐり、視線を教壇に移せば、ゆったりとこちらを振り向くせんせー。

「ん、おはよーね。相変わらず早いなあ、南雲さん」
「えへへ……10日連続一番乗りです！」

凄いやん、と微笑む先生に、意図せず上がる口角。

せんせー何してたんですか？
書類整理。
嘘だぁ、机の上灰皿しかありませんよ。
分かっとるんなら聞くんじゃありません。

教壇の真ん前、言わば特等席に座ってお話をするのが、学校での一番の楽しみ。
まだ7時になったばかりだから、この学校には見回りの先生を除いて誰も居ない。
まだ朝の早い時間だから、いつもよりも幾分緩いせんせーが見れるから、苦手な早起きも毎朝頑張れる。

面倒くさそうに見えるけど、何だかんだ話に付き合ってくれるせんせーにまた胸がキュンとなる。

私がこの時間に来るから、少し早く生徒玄関の鍵を開けてくれてるところも、私が教室に入ったらすぐタバコの火を消しちゃうところも、全部、全部すき。

「何ニヤニヤしとるん」
「ふふ、別に～？何もありませんよ！」
「ふーん…？」

もう、時間なんて止まっちゃえばいいのに。そしたらせんせーとずうっと話していられるんだけどなあ。
長い針が4を指した時計を恨めしく見上げる。

「…そろそろ自分のクラス戻らなきゃ」
「あれ、20分？早いなあ。……あーあー、そない悲しい顔せんの。すぐ隣だから、ほら」

情緒不安定？だなんて言うけど、せんせーのせいなんだから。

「……またね、南雲さん」
「！？」

教室から出たまさにその時、中から聞こえたその声に思わず緩む頬。いとも簡単に熱くなる顔。沈んだ体が一気に浮き上がってる気分
余裕そうな笑みを浮かべているであろう先生に、ぐうとも言えない私。

あーもう！
せんせーのばか！！