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コンコン、と黒いドアをノックすると、中から神ちゃんの「はい」という返事が聞こえた。
黄「俺や。入ってもいいか？」
そう尋ねると少しの間が空いて、小さくドアが開き、神ちゃんが顔を出した。入っていいよ、と言わんばかりにドアを開けたまま部屋の中へ戻っていく神ちゃんの後ろをついて行く。
ドアを閉めて、曇った表情を浮かべる神ちゃんに話し掛ける。
黄「……心配か」
緑「……うん」
黄「そうかそうか」
のんちゃん、流星は復活したものの、しげは未だに病院にいる。
見舞いに行った時、こんな大袈裟にしなくてもいいのにな、と笑ったしげの足には包帯が巻かれていた。
それでも本人は元気だそうで、寧ろ動けないことを嘆いているらしい。
俺はベッドに腰掛ける神ちゃんの隣に座って、そんなしげの様子を伝えた。
黄「＿＿まあ、そういうことや。心配になる気持ちも分かるけどな。あいつ、よく特攻するし、ヒヤヒヤすんのもよく分かるよ」
緑「……しげのこと、守りたかった」
黄「現場に出て……ってことか？」
緑「しげだけじゃない、僕だけ体も張らないでサポートしかできないのが歯がゆい」
ぼそぼそ、と何とか絞り出すような声量で呟く神ちゃんは、膝の上に置いた手をギュッと握っていた。
黄「……そうか。そうよな」
俺は遠くを見つめて、しげと神ちゃんに会った時のことを思い出していた。
＊
＿＿しげと神ちゃんと初めて会った時、俺はまだ中学生だった。
両親が異能力の研究をしていたことで、俺は能力の存在を既に知っていた。
しげと神ちゃんは、能力を持っていたこと、そして家族が居ないことから、既に警察から保護を受けていて、警察病院の地下にある施設で暮らしていたんだ。
まだ能力や能力犯罪についての知識が浅かった警察は、両親が経営する研究所に協力を求めた。それで俺は両親と共にその施設に行くことになった。
そこに居たのは身寄りのない、色とりどりの瞳を持つ子供たち。
無惨に引き裂かれた壁や床、破壊されたおもちゃ、所々に飛び散った血痕が、そこの酷さを物語っていた。
部屋の奥の方へ行った時に見た、ムッとした表情のしげと、しげの陰に隠れて怯えた顔をしている神ちゃんの姿を、今でもはっきりと覚えている。
話を聞くとどうやら、能力を使いたがらない神ちゃんのことを、しげが一生懸命庇っていたらしい。同時に、喧嘩っ早いしげを神ちゃんが抑えていたことも。
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作者名：@雑草 | 作成日時：2023年3月8日 12時
