▫ ページ31
＊
＿＿人気の無い所、防犯カメラの死角になるルート、場所。淳太はそう言っていた。
頭を回せ、こういうのは、俺の得意分野のはずやろ。
橙「どこやねんあいつ……ッ！」
頭をガシガシと掻き、手に握った通信機と発信機を握りしめる。
＿＿恩返しするんやろ、あいつに、あいつの親父さんの分まで……！
俺はそう心の中で叫び、
その時、耳に着いた通信機からジジッとノイズが走った。神ちゃんの声が響く。
緑『……皆のスマホに、監視カメラがある場所を送りました。これである程度、ルートを絞れるはず』
橙「……!!」
通知音を鳴らしているスマホを取り出して、画面をタップする。監視カメラがある所に青い丸が光っている。
この配置なら、海側にある倉庫か、川の傍にある廃工場ならカメラに映らずに行ける。
橙「ありがとう、神ちゃん」
俺はスマホを片手に走り出した。
錫雪との戦闘でかなり体力を消費していたのもあり、足がとてつもなく重く感じた。泥の中を走っているような感覚だ。
海側にある倉庫を次々と見渡しながら走り回る。しかし、崇裕の姿はなかった。
橙「ここじゃないんか……！」
＿＿間に合ってくれ、どうか、あいつがあいつでなくなる前に。
人気のない街をひたすらに駆け抜ける。
肺が焼けるようだ。足の感覚が鈍くなっていくのが分かる。それでも足を止める訳には行かない。
赤いトタン屋根の廃工場が見えてきた。耳を済ますと、人の話し声が聴こえて来るのに気づく。
廃工場の中に駆け込むと、崇裕がトー二ーの喉元にナイフを突きつけている所だった。
目に宿る紫色の輝きが、いつもよりギラギラと強く光っているような気がした。
崇裕が何かを呟き、トー二ーに向かってナイフを振りかざす。
橙「崇裕!!」
俺は思わず大声で叫んだ。
崇裕の動きがピタッと止まる。それでも、こっちを見ることは無い。
まるで何かに憑依されているかのようにトー二ーだけをじっと見つめていた。
俺が駆け寄ろうとすると、崇裕が口を開いた。
紫「来んな」
橙「!!」
崇裕の低い威嚇するような声に、思わず目を見開いて足を止めてしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 209人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：@雑草 | 作成日時：2023年3月8日 12時
