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＊
紫『＿＿茶辺さん、勝負してや！』
道場の隅で座っている茶辺さんに駆け寄りそう声を掛ける。
『じゃあ五本勝った方が勝ちな、来い』
茶辺さんが微笑みながら立ち上がり、片手をクイクイと動かした。
紫『はいっ』
幼い頃の俺は、がむしゃらに茶辺さんに向かっていった。
紫『おりゃ！』
不意をつくために拳を次々に入れ込んで、足元を掬うように素早く足を入れ込んだ。
すると、茶辺さんがバタリと倒れ、アハハと笑った。
『よし、崇裕に一本な』
俺はその言葉にウキウキしたんだ。初めて師匠に勝った、その感覚でホワホワと浮き足立つ気持ちだったのを覚えている。
それから俺は二本連続で取ることが出来た。
あと二本、そう思っていたのも束の間、次々と投げ飛ばされたり、足を掬われたりして、あっという間に茶辺さんに五本連続で取られてしまった。
混乱したままグズ、と鼻をすすりながら座っていると、茶辺さんは俺の隣に座って口を開いた。
『人間は勝利を確信すると、隙ができるんだ。
だから、どんなに有利であっても絶対気を緩めちゃいけない。
逆に言えば、不利な時はとにかく相手の隙を探すんだ。そしてその隙を絡めとって突く！
諦めないで戦い続ければ、勝てはせずとも負ける事は無いんだ』
紫『……おれ、隙だらけやった？』
『うーん、いつもよりずっと無防備だったなあ。それに最後の二本辺りは完全に諦めてただろ』
茶辺さんがイタズラにニッと笑うと、道場の隣にある家からお茶を持ってきていた奥さんにペチッと頭をはたかれていた。
『子供相手に大人気ないですよ』
『いてっ……』
そんな様子を見ながら俺は茶辺さんの言葉を、何度も頭の中で反芻させていた。
＊
紫「＿＿分かったよ。革命……やっけ？」
俺はひとつため息をついてそう呟いた。
「意外だな。お前が＿＿」
トー二ーがそう言い切る前に、俺は最後の力を振り絞ってトー二ーの足に向けて足を振るった。
これが上手くいかなければ、俺は死ぬだろう。まるでスローモーションを見ているような気分だった。
トー二ーの右足に、俺の蹴りが届く。
トー二ーなら……茶辺さんなら、反射的に避けられる速度のはずなのに、俺の足は確かにトー二ーの右足を蹴った。
トー二ーの身体が傾く。
俺はその隙を見逃さずにトー二ーの足を掬って押し倒し、素早く手錠をトー二ーの腕にかけ、ナイフの刃を握って強引に奪い取った。
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作者名：@雑草 | 作成日時：2023年3月8日 12時
