▫ ページ28
ナイフを振っては避けられ、防がれ、こっちは体力が無くなってきた隙を突かれて切られ、刺された。その度にグッと歯を食いしばる。
少しでも止まればもう動けない、そんな予感があった。
呼吸がどんどん浅く早くなって行く。
それに伴って、何となくトー二ーの動きが遅くなっているような気がした。
いや、正しくはトー二ーの動きは遅くなっていない。遅く"見えている"のだと、少し経って気づいた。
そのお陰で、トー二ーの正確すぎる動きの癖を見つけることができた。こいつは右足を庇いながら動いている。恐らくこの前の照史からの打撲が治っていないんだろう。もしかしたら骨折していたのかもしれない。
目を切られようと、腹を刺されようと、次の瞬間には傷が塞がる。
さっきよりも、傷が治る速度が格段に上がっているのが分かった。
紫「何がなんでも殺す……家族の仇を取る……」
まじないのように何度もそう呟いた。
「……！」
その時、やっと刃がトー二ーの頬に届いた。初めて一矢報いることが出来た。
このまま行けば＿＿そう思っていたその時、身体が金縛りにあったかのように固まった。動きたいのに、動けない。
そのまま俺の視界は180°回った。背中に強い衝撃が走る。
「……お前はもうとっくに、限界を越えようとしていたんだよ。崇裕」
トー二ーに見下ろされていることから投げ飛ばされたのだと気づく。
紫「……う、るせぇ」
高い山の山頂にいるような感覚に陥った。呼吸をしようとすればするほど、大きく乱れていく。
確かに、俺はもうとっくに限界だったのかもしれない。
ポケットから、紫色のクリスタルが付いたリングが零れ落ちているのが、四隅が暗くなっている視界にぼんやりと見えた。
「選べ。俺らと一緒に革命を起こすか、ここで死ぬか」
トーニーが見下ろしながらそう吐き捨てる。
＿＿おとんなら、どうしてたのかな。おとんなら、勝てたのかな。俺が居たから、おとんは俺を庇って、死んだのかな。
そう思いながらトーニーの顔を見つめる。その時、ふと昔の記憶が蘇った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 209人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：@雑草 | 作成日時：2023年3月8日 12時
