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車窓から見える街並みを見て、俺は思わず身構える。
運転席に座った淳太のお父さんが、前を向いたまま言葉を放った。
「本部に寄ればいいんだよな？」
黄「うん。ありがとう、急にお願いしたのに」
「いやいや、これが俺の仕事だから」
黄「何かあったらすぐ連絡して。神ちゃんもね」
淳太がそう言いながら、クリスタルの付いたネックレスを取る。
俺が小さく頷くと、淳太は俺の目を見つめ、口を開いた。初めて見た時と変わらない、黄色く輝く瞳がそこにあった。
黄「……俺らにできることをしよう。いつも通り」
俺は再度頷き、前に視線を向けた。
流れてくる風景も、今の所はいつもと変わらないが、いつ、ユートピアが動き出すのか、それは彼らにしか分からない。
＿＿恐らく、政府が行った人体実験の被害者の中に、ユートピアのリーダーが居るはずだ。それが、全てのきっかけだから。
「着いたぞ」
黄「ありがとう」
淳太がそう言ってシートベルトを素早く取り外し、外へ出ようとした。
俺は無意識に淳太の服の裾を掴み、テレパシーを送っていた。
緑『淳太』
黄「どうした？」
ドアノブに手をかけたまま、淳太がこっちへ振り向く。
緑『気を付けてね。無理はしないで』
俺がそう言うと、淳太は初めて会った時と同じ柔らかい笑顔を浮かべて、口を開いた。
黄「ああ。分かってるよ。神ちゃんもね」
緑『うん』
俺が頷くと、淳太も頷き返して、車外に足を踏み出した。
最後にもう一度、車のガラス越しに淳太と目が合う。淳太は覚悟を決めたような表情で俺の目を見た後、着ていたコートの裾を翻し、建物へ向かって歩き始めた。
その時車が動きだしたかと思うと、淳太の姿がどんどん小さくなって行った。
俺が淳太の後ろ姿をずっと見ているのに気づいたのか、淳太のお父さんがミラー越しに俺の顔を見て淳太そっくりの微笑みを浮かべた。
「心配してくれてありがとな」
俺が首を横にブンブンと振ると、淳太のお父さんがハンドルをきりながら口を開く。
「そうか、喋れないんだったな。心ん中で喋ってくれればある程度は会話できるよ」
淳太のお父さんが器用に片手でペンダントを外して、またミラー越しに微笑んだ。
＿＿聞きたいことがあるんです。
俺がそう心の中で呟くと、淳太のお父さんが首を傾げた。
「どうした？」
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作者名：@雑草 | 作成日時：2023年3月8日 13時
