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桃「まだ眠ってる」
のんちゃんの返答を聞いて、俺は視線を落とした。
黄「そうか」
＿＿神ちゃんを助けた日から丸二日、神ちゃんは眠ったままだった。病院に行っても身体に異常は無いって言われて、何も出来ない状態が続いた。
俺らは親父のダミーの研究所を仮拠点として身を寄せ、神ちゃんと流星も、俺らと一緒に研究所で安静にすることになった。
……いつ、ユートピアが街に牙を剥くのか。俺は、勿論他のみんなも、夜も眠れない程不安だっただろう。
そんな俺らとは対照的に、能力犯罪は水を打ったように起きなかった。
嵐の前の静けさ、と言うべきか、暗い曇天の下にずっといるような薄気味悪い気分だった。
それと、ユートピアの研究員、灰浜一樹は一命を取り留め、今は警察病院で厳重に監視されながら治療を受けているはずだ。
神ちゃんが起きたら、このことも伝えないと……。
＿＿"淳太"。
テレパシーで聞こえた神ちゃんの、苦しげな声と、バツンと言うテレパシーが途切れた時のあの大きな音が頭から離れなかった。思わず小型マイクの調整をしていた手を止める。
また何かあったら、そう考えると、思わず頭を掻き毟りたくなるような衝動に駆られ、唇を噛んで俯いた。いや、こんなこと考えている場合じゃない。俺がしっかりしないと。
その時、広間のドアが開き、神ちゃんの様子を見に行ったはずのしげが姿を現した。
赤「神ちゃん、目ぇ覚ました」
その言葉を聞いて、何人かが椅子から立ち上がる。
橙「ほんま!?良かった……」
照史は安心したように息を吐くと、再び椅子に腰を下ろした。足の怪我はだいぶ良くはなったが、それでもまだ歩く時に少し引き摺っていた。
しげが眉間に皺を寄せて、再び口を開く。
赤「でも、なんか声が出せないみたいで」
桃「声が……？」
青「アンヘルのせいかな」
のんちゃんと椅子に座っている流星が顔を見合わせる。
赤「分からへん。多分、ユートピアのヤツらがなんかしたんやと思うんやけど……」
俺はしげの言葉に頷いて、自分の考えを話した。
黄「神ちゃんが俺らのサポートに回ってることは、ユートピアには既に漏れてるはずやから、多分そこを狙われたんやろうな。ガスマスクを使っていたってことは、もしかしたら刺激物か何かをアンヘルと一緒に投与されたのかもな」
紫「そういうことか」
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作者名：@雑草 | 作成日時：2023年3月8日 13時
