Ep.8 僕らの理由 ページ41
＊ ＊ ＊
＿＿神ちゃんを救出してから丸二日、神ちゃんはあれからずっと眠りっぱなしだった。
しげと照史が言うには、電源が切れたみたいに倒れたって言ってたから、いつか目を覚ますと信じてるけど、やっぱり心配してしまう。もし、目を覚まさなかったら……そう考えただけでも、震えが出そうだった。
俺らは今、淳太の親父さんの研究所に身を寄せていた。正しく言えば、ダミーの研究所だと淳太が説明してくれた。
……ダミーの研究所が用意されてるってことは、今思えばやっぱり、上の方の人間はユートピアみたいな犯罪組織がいることを分かってたんだろうか。
俺は神ちゃんの額に乗っていたタオルを手に取る。乾き始めているタオルをぎゅっと握って、ため息をついた。
＿＿戦争で利用出来る、核兵器や化学兵器、生物兵器に次ぐ、第四の兵器、強化人造兵を開発するため。
神ちゃんの言葉が、頭の中に何度も現れた。
政府の思惑で好き勝手されて、巻き込まれて、人をなんだと思ってるんだろう。
俺は目を瞑ってもう一度息をふーっと吐き、部屋のドアを開けて、皆のいる広間に向かった。この建物の中で一番大きい部屋だ。
広間に繋がる扉の前に、しげが一人で壁にもたれかかっていた。
桃「しげ」
俺が声を掛けると、しげは下に向いていた視線を俺の方に向けた。
桃「タオル乾いちゃったから、濡らしてから部屋に行ってあげて」
俺がそう言いながらタオルを渡すと、しげはタオルに視線を向けながら、小さく呟いた。
赤「分かった。ありがと」
弱々しい表情に、能力を使わなくてもしげの感情が見えるようだった。
大事な人が回復するか分からない、という不安はつい最近痛いほど味わったから、よく分かる。
桃「しげ、早く行ってあげて。多分、しげのこと待ってると思う」
そう声を掛けて、俺は広間のドアを開けた。
＿＿神ちゃんが眠っている間、またユートピアの奴らの襲撃があるかもしれない、と淳太以外の五人で神ちゃんを代わる代わる看ていたんだ。
淳太は、まるで何かに対して準備をしているかのように、広間で昼夜問わず通信機やカメラの修理をしていた。それに、研究所に対アンヘル用の鎮静薬を開発することを頼んだみたいだ。
広間に入ると、淳太が俺の方を見て口を開いた。
黄「のんちゃん、神ちゃんは？」
桃「まだ眠ってる」
俺がそう答えると、淳太は「そうか」と言って、再び作業台に視線を移した。
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作者名：@雑草 | 作成日時：2023年3月8日 13時
