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＿＿なんで実験体の人達の中でしげだけを助けたのかは分からない。
そう書いて渡すと、しげは眉根を寄せて少し俯いた。何か考えているみたいだった。
赤「……俺、もしかしたらユートピアの一員として動いてたのかもしれない。俺の事をNo.0って、ユートピアのリーダーが呼んでたのを思い出してさ」
俺は最初、しげが言っている言葉の意味が分からなかった。
しげが、一員？ユートピアの……？少なくとも四歳……いや、しげは五歳の時に施設に来た。五歳の子供に、能力犯罪の片棒を担がせていた……？
じゃあ、お父さんがしげを助けたのは、No.0として利用されてたしげを、助けるため？
赤「あんまり思い出せないんや。小さかったからってのもあると思うけど、なんか、記憶に蓋をしてるみたいな感覚でさ。思い出そうとすると、頭にすぐモヤがかかるんよ」
人は、自分を守るために記憶をわざと閉じ込めることがある。しげもそうなのかもしれない。
けど、だとしたら……だとしたら、相当辛い思いをしていたってことだ。それを思い出すことは、果たしてしげにとっていい事なのか……？
俺は「しげはその記憶を思い出したいの？」とメモ帳に書いて渡した。
しげはメモ帳を見たまま、少し遠い目をして答えた。
赤「……分からない。けど、何となく嫌な予感がしてる」
そう言って俯くしげの気持ちが、痛いほどわかった。自分の中で、得体の知れない何かがジワジワと自分を追い込んでいく感覚。
俺は、コア。しげにはNo.0という、それぞれ自分の知らない自分が居るから。
沈黙に耐えられなかったのか、しげはぎこちなく微笑んで「とりあえず、皆の事呼んでくるわ」と言って部屋から消えた。
＿＿No.0……しげがどうしてそう呼ばれたのかは分からないけど、しげが嫌な予感がするって言うってことは、きっとそうなんだろう。
能力のコントロールが出来なくなっている事、そしてNo.0として特別扱いを受けていたことも全部、しげの精神には間違いなく良くない影響を与えてる。
ふと、しげの太陽みたいな笑顔を思い出した。皆を照らしてくれるような、明るい笑顔。最近、ずっと見ていない気がする。
……もしも、何かがあったとしても、俺がしげのことを支えよう。しげが今までしてくれていたみたいに。
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作者名：@雑草 | 作成日時：2023年3月8日 13時
