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あの照史の足の怪我じゃ、結晶を全部避け切るのは難しいだろう。
早く手錠をかけなければ。俺は照史の方へ伸ばしている神ちゃんの腕を掴み、もう片方の手で手錠を掛けようとした。
すると、凄まじい力で振り払われ、気付けば俺は壁に叩きつけられていた。
手からこぼれおちた手錠が、軽い音を立てて地面に落ちる。
橙「しげ!!」
そんな照史の叫び声がくぐもって聞こえる。
神ちゃんが壁にもたれる俺を見下ろし、手をかざした。
ぼやける視界に、ギラギラと光る緑色の瞳がやけに鮮やかに映る。
赤「……ごめんね、神ちゃん」
何かを考える前に、そう口に出ていた。
＿＿無理させてごめん、止められへんくてごめん。
その時だった。
緑「いや、や……」
耳鳴りがしていて聞き取りづらいけど、確かに神ちゃんの声が聞こえた。
神ちゃんの顔を目を凝らして見てみると、涙が頬を伝っているのに気づいた。
赤「神、ちゃん……？」
緑「……どう、して……？」
＊
＿＿苦しい、心臓や脳みそが破裂しそうで、マグマを身体の奥に流されたみたいだった。
それでも、自分の身体が自分の物じゃないような、冷却装置が壊れたコンピューターみたいな自分を、どこかボーッと冷たく見ている自分が居た。
その時、淳太の声が頭の中に微かに響いたのに気づく。名前を呼んでいるのが分かった。脳が上手く働かず、ただ、「淳太」と呼び返すことしか出来なかった。
それでも、淳太の呼び掛けで、閉じ込められていた意識が一気に呼び戻された気がした。
晴れた視界にしげが壁に持たれて虚ろな目をしていた。ごめんね、と呟いているのが口の動きでわかった。
血の臭いが部屋の中を充満している。結晶がまるで茨みたいに色んな所に生えていた。
視界の隅に、結晶が身体に刺さっているサンディの姿が見える。
＿＿ああ、俺は、俺はまた……。
いやなんや、全部が。俺は少し、疲れたよ。
眠ってる間に、色々思い出したんや。
俺の結晶のせいで、沢山の人が苦しんだこと。
俺自身も、無理やりにでも結晶を出すように、研究員の人達に殴られたり、怒鳴られたりしたこと。
俺、なんかしたのかな。なんか、悪いことしたかな。
その時、手首に冷たい感触がしたのに気づいて、暗い何かに飲み込まれていくような感覚が止まった。
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作者名：@雑草 | 作成日時：2023年3月8日 13時
