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流星の答えを待つ間、俺は実験体にされていた時の記憶を思い出していた。
白衣の人達にガスマスクを着けられ、ガラス管の中から出られなくて、でも何故か抵抗する気は起きなかった。
＿＿アンヘルには神ちゃんの結晶が必要だとしても、神ちゃんがアイツらの言う通りに結晶を出すとは思えへん。神ちゃんは、そういう時、死んでも我慢する奴やから。
その時、頭の中に最悪な想像が過ぎった。
赤「あいつら、もしかしたら神ちゃんにアンヘルを使う気かも」
橙「そうか……神ちゃんの能力を強化させて、無理やり結晶を作らせるってことか」
早くしないと、神ちゃんが死んでしまうかもしれない。そう思ったその時、流星の声が頭ん中に響いた。
青『分かった。一番奥から二番目の部屋。しげ達から見て右側』
橙『さんきゅ、流星。急ごうしげ』
赤『うん』
俺らは長い廊下を駆け抜け、流星の言っていた部屋のドアを思い切り開けた。
部屋の中に入ると、部屋の奥にある幾本ものガスタンクや、ガスタンクのうちの一つに置かれたガラス瓶に入ったキラキラと輝く緑色の液体、錫雪の時のように壁に貼り付いた虹色の結晶が、物々しい雰囲気を醸し出していた。
部屋の奥の中央に、横たわって居る神ちゃんを見て、思わず叫ぶ。
赤「神ちゃん！」
顔の下半分を覆うような大きな半透明のガスマスクを着けられた神ちゃんは、固く目を閉ざしていた。その隣にいる眼鏡の白衣の男が三日月のような笑みを浮かべる。
赤「お前……」
俺はその男に見覚えがあった。
＿＿そうだ、小さい頃、俺を見ていた研究者の内の一人、それに離反者の名簿の中にこいつが居た記憶がある。確か名前は、
トーニーの奥さんと言い、やっぱり離反者がユートピアに入っているのか。
「ああ、少し来るのが早かったですね」
赤『こいつ、旧研究所の離反者や。名前は確か灰浜 一樹。俺が実験されてた時もおった奴』
橙『分かった』
隣にいる照史が、男に向かって低い声で問い質した。
橙「神ちゃんに何した」
「本来あるべき姿に戻ってもらっただけですが？」
ニコニコと余裕有りげな笑みを浮かべる灰浜に、俺は過去の記憶なんか一瞬で忘れて、拳を握りしめた。
赤「クソ野郎……！」
そんな言葉が勝手に口から漏れ出ていた。
灰浜はさらに言葉を続ける。
「貴方たちは本当に勿体ないことをしているんですよ」
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作者名：@雑草 | 作成日時：2023年3月8日 13時
