43話 ページ44
いつの目に瞑っていたのだろう瞳を、そっと開く。
そこには、数分前と変わらない夜空が写った。
Aは半分惚けたように自分の手元を見る。
握って、る。
Aは確かめるように後ろを見た。
そこには、自分は何もしていないと言うように両手をあげひらひらと振っているカルドがいる。
途端、Aの中が興奮で弾けた。
ぶわりと全身を熱が回る。
｢カルド。｣
｢はい。｣
彼女が今、どう思っているかが顔を見なくてもわかる。
｢私、今、飛んでるのね。｣
｢はい。｣
その弾む声、揺れる肩。
｢私、今、飛べてるのね！｣
｢はい。｣
貴方の、そんな姿が見れるんだ。
｢私、…私!!!!｣
飛ぶことが、できるのね！
ならば、僕は何でもしましょう。
好きなものを与えましょう。
好きな所へ行きましょう。
だから、だから、
頼むから。
脳裏に過ぎるは、今まで見たこともなかった彼女の瞳。
Aと共に最も多くの時を過ごしたのは、ウォールバーグを除けば恐らく自分だ。
彼女が幼き時から知っていた。
彼女に初めて会った衝撃から数年。
その間に勿論、故意にした方もいました。
ただどれも、貴方ではなかった。
A、それはいつからですか、
私は貴方の、
女の顔は、一度も見た事がなかった。
頼むから、あなたは、このままで。
どうか、どうか、
頼むから。
皆が同じならば、きっとこれも、抑えられるはずだから。
目の前で興奮冷めやらぬというようにはしゃぐ彼女は、自分の知っている無垢でほっとした。
｢そろそろ夜が更けます。帰りますか？｣
少しだけ意地悪気に、カルドは言う。
｢何言ってるのカルド！無理よ！私、｣
｢今日は眠れる気がしないもの！｣
それに対して、夜闇の中弾けるようにAが答えた。
くすり、くすくす
押し殺した笑いが、それでも漏れてしまう。
ああ、
｢それでは、この夜が明けるまで、｣
やはり、彼女は。
｢共にいましょう。｣
可愛らしい。
この日は、Aにとって特別な日となった。
空を飛んだ。
キスをした。
それは、これ迄のAの中の何処にも無いもので。
それは、Aの中の、何かが変わった日で。
それは、Aのこれからが、これ迄とは全く違うものになることを、表していた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 214人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sub山(プロフ) - そらさん» そらさん！とっても嬉しいコメントありがとうございます♥️ぐいぐいいっちゃっていいんですか？笑今許可を頂いたのでがっつりいきます!! (4月1日 2時) (
レス) id: f95fa78fdc (このIDを非表示/違反報告)
そら - sub山さんの小説大好きです！読んでいてキュンキュンします❤️これからも更新がんばって下さい！レインとオーター推しの方多いはずなので、その2人はぐいぐいいっちゃって下さい笑 (3月31日 9時) (レス) @page49 id: 8e3a2b7bbe (このIDを非表示/違反報告)
sub山(プロフ) - Suzukaさん» 確かに！レナトス見ないですね💨入れましょう!! (3月25日 1時) (レス) @page28 id: f95fa78fdc (このIDを非表示/違反報告)
Suzuka - レナトス落ち中々無いので候補に入れてもらえると嬉しいです！ (3月24日 23時) (レス) id: 659586fc39 (このIDを非表示/違反報告)
sub山(プロフ) - ルイさん» 即レスで気持ち悪くなってたらすみません(>_<)めっっっっっっちゃ！嬉しいです!!!!!!本当にありがとうございます✨今、ルイさんのおかげで私が最高です！ (3月23日 19時) (レス) id: f95fa78fdc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sub山 | 作成日時：2024年3月19日 13時
