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270話 ページ28

その夜。

Aは暇さえあれば、片足立ちをしていた。
なんせ生粋の運動不足ヒョロガリである。
ある程度の筋肉はついたとはいえ、普段使っていない筋肉を使うにはまだまだ慣れず、決まった時間にトレーニングしているようでは到底追いつかない。

今は船尾の方で、一人、寝る前の時間を使って行っていた。


「よう。まだやってんのか。」

熱心だな。
こいつも、譲れねえもんがあんだな…。


「千空君!うん、目を開けてたらだんだん続くようになってきたよ!」
「千空君なんか、超しちゃうかも!」

Aはにっと笑ってみせた。


……。
超す……ねえ…。


千空はすっと目を細め、無言でAに近づくと、人差し指でAの肩をつんっと押した。
途端、Aはぐらぐらと揺れ、そのまま後ろに倒れ込む。

びたっ

「いったー!千空君、何して…!!!!」


とんっ


軽い音がした。

千空はそのまま甲板についている Aの手の上から、自らの手を重ね、体重をかける。
Aの上から、覆い被さる形になり、目と目がとても近い距離で合った。

超える、だあ?
生粋のヒョロガリが何言ってやがる。
お前一人、押さえられねえほど、俺も力がねえ訳じゃないんだよ。
そんなの、工夫次第でどうにでもなるわ。
身長も体重も、こっちのが上だぞ。

「俺の力が弱えってんなら、今すぐ退けてみやがれ。」

目の前のガーネットから目が離せないAは、その言葉に手にぐっと力を込める。
しかし、千空の体重が乗っかったそれは、ぴくりとも動かなかった。



「舐めんな、ばーか。」



千空は不敵に笑うと、Aの目を覗き込むように、さらに近づく。
ようやく自分の身に起きている事を理解したAは、顔を赤くさせると必死に千空へ訴えかけた。

「せ、千空君!近い!近い!!」
「ごめんなさい!千空君のほうが、ずっと強いから!」
「だから、これ以上は、お願い…!!」

ずっと、憧れだった千空がありえない距離にいる。
Aはもう、爆発寸前だった。


ぞくっ


あー。こいつは…こんな顔すんのか…。

これは、唆るじゃねえか…。

まあこれ以上は、俺も駄目だな…。


「くく。真っ赤じゃねえか…。ほら。」


千空はすっとAの上からどくと、手を差し出した。
Aはその手を取り立ち上がると、すぐ様寝室へ向かって走り出す。


「せ!千空君!おやすみ!」
「早く寝てね!!」

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Jane Doe(プロフ) - メウ(゜ロ゜)さん» メウさん!コメント、ありがとうございます!!えー!ドキドキしてくださってありがとうございます!彼らの魅力は青天井だと思うので、私なりに沢山出していけたらと思います!後は、原作と、アニメと、他の作者様達の作品で補完補完をお願いします笑 (2023年4月9日 9時) (レス) id: 980e4647fc (このIDを非表示/違反報告)
メウ(゜ロ゜) - 更新ありがとうございます!!だんだん夢主ちゃんへのアピールが分かりやすくなってきて、読んでいてドキドキしました!頑張ってください! (2023年4月9日 7時) (レス) id: c71eec4ba7 (このIDを非表示/違反報告)
Jane Doe(プロフ) - まるさん» まるさん!コメント嬉しいです!大人組、いいですよね!了解です!直直挟んでいきますね! (2023年4月5日 6時) (レス) id: 7151efa53f (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 262話天才です...こういうやりとり待ってます...!更新頑張ってください! (2023年4月5日 0時) (レス) @page21 id: abe392a41c (このIDを非表示/違反報告)
Jane Doe(プロフ) - メウさん!本当にコメントありがとうございます!もう本当に、励まされてばかりで…!!これからもよろしくお願いします! (2023年4月2日 2時) (レス) id: 7151efa53f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Jane Doe | 作成日時:2023年4月1日 10時

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