603話 ページ15
ぱさり
最後の一房が落ちた。
Aの髪は、腰程の長さになっていた。
しゃら
それに、優しく優しく、南が櫛を通す。
優しく優しく扱われるそれは、いつしか光を反射する、美しい髪になった。
ふっ
と、南は一度満足そうに息を吐く。
｢A。｣
そして、その心をそのままに、Aへ言葉を飛ばした。
｢大人って、どうやったらなれるかしら？｣
大人…。
｢年齢を重ねたら、大人になると、思っていました。｣
その言葉は、告げていた。
大人のなり方が、解らないと。
南は、また、ふっと息を吐いた。
｢大人ってね、勝手に、なれるものじゃないの。｣
｢身体だけ大きくなる事は、大人でもなんでもないの。｣
一つ一つ、教えよう。
｢大人ってね。誰かに、貴方はもう大人ね。って認めてもらえて、｣
｢初めて大人になれるのよ。｣
そう、それは、許されること。
｢A。｣
南は、そっとAの正面へまわる。
｢大人ってね、凄いのよ。｣
｢大人ってね、自分の事は、全て自分に降り掛かってくるの。｣
Aはそれに、少し眉を下げる。
どうしたって枷に聞こえて、とても凄いものとは思えなかったからだ。
｢子どもはね、そうじゃないの。｣
｢いつだって誰かが前に立ってくれる。｣
｢自分がやった事でも、誰かが庇ってくれる。｣
｢自分で招いた事でさえ、自分で責任を、取れやしない。｣
｢でもね、大人はそうじゃない。｣
｢自分でやったことは、全て自分に降りかかるの。｣
怖いと、思った。
───それは、守られることが、当たり前だったから。
｢でもね。｣
でも、そうじゃないの。
｢それは、全てが自分次第で、どうにかなるということよ。｣
｢ねえ、A。｣
聞いて。
｢自分の力で、全てを動かせるの。｣
こんなこと、
｢こんなに素敵なことってないでしょう？｣
こどもには、出来やしないのよ。
……大人。
南から与えられる言葉を受けるAに、更に南は、続ける。
懐に下げていた小さな袋から、一つの貝殻を取り出した。
それは、小さな小さな二枚貝。
深く波打つ海の色を映した、浜辺に浮かぶ、二枚貝。
その深い青に目を奪われていると、そっと蓋が開いた。
その中には、鮮やかで艶やかな赤が一つ。
南はそっとその赤を小指に移した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 148人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Jane Doe(プロフ) - 美玖さん» 見てますよー！まじでオリジナル展開凄いですね！本当に尊敬です！これからも書き方とか学ばせてください＼(^o^)／楽しみにしてます！ (1月17日 0時) (
レス) id: 980e4647fc (このIDを非表示/違反報告)
Jane Doe(プロフ) - ぴーさん» 楽しみにしていてくれてありがとうございます！そして、こんな風に感想もいただけて嬉しいです!!原作の軸が無いとめっちゃ難しいなと痛感しております(>_<)でも、ぴーさんのこの励ましでやる気は十分です！本当に本当にありがとうございます＼(^o^)／ (1月17日 0時) (レス) id: 980e4647fc (このIDを非表示/違反報告)
美玖(プロフ) - Jane Doeさん» え？！わぁ、私の作品も読んで下さっていたんですね！アンケートもありがとうございます、嬉し過ぎます！なるべく数日に一度は更新を心掛けてるので私も頑張ります！見て頂いてるだけで幸せです！嬉しすぎてレスしてしまいました…！！ (1月11日 9時) (レス) id: ddcbc460f7 (このIDを非表示/違反報告)
ぴー - 更新、いつも楽しみにしてます。言葉選びや、情景の描き方が好きで、しんどい時の頼りにさせてもらってます。これからの展開どうなっていくかとても楽しみです！これからも応援してます！ (1月10日 21時) (レス) @page47 id: b5feedf6c0 (このIDを非表示/違反報告)
Jane Doe(プロフ) - 美玖さん» 美玖さん！とってもとっても嬉しいコメント、本当にありがとうございます!!私、落ちアンケートがっつり投票してました！今後の展開、とても楽しみにしています！美玖さんの更新速度、凄いですよねめっちゃ尊敬してます！王道だけど、これからも追わせてください(≧∇≦) (1月7日 2時) (レス) id: 980e4647fc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Jane Doe | 作成日時：2023年11月18日 2時
