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キスをしないと出られない部屋7 ページ7

「見たか?それが条件だそうだ。」
「A。お前には悪いと思う。」
「だが、こうしてこのまま手をこまねいている訳にもいくまい?」

優しく言葉を畳み掛ける。


「優しくする。だから、俺に、その権利をくれないだろうか?」


努めて、紳士的な表情を作り出した。
僅かに眉を下げ、自分もお前と同じように困惑していると。
その中で、事態の解決を共に図りたいのだと。
決してやましい下心など無いと。
その先を想像したのだろうか。
目の前の愛しい女は、瞳を僅かに潤ませた。
それが、自分を更に誘うことを、本人は知らないのだろう。

「なあ、A。」

龍水が更に畳み掛けようとすると。

「待ちな、A。」

不意に、手を引かれた。

「その判断は早急ってもんだぜ。」

一人に向かっていた意識を呼び戻すように、声がかけられる。
いつの間に来たのだろうか。
Aの横にはスタンリーがおり、じっとAを見つめていた。

「スタンリー!」

龍水に向けていた目が、外れた。
龍水は脳内で舌打ちをすると、邪魔をした本人と向き合う。

「貴様が言ったのだぞ、動くなと。」
「それを、本人が破るとはな。」

「仕掛けてきたやつが何言ってんの?」
「あのまま黙ってる馬鹿はいねーよ。」

二人の間に火花が飛び交う。
至近距離で交わされるそれに、驚いた。

「A。大丈夫かい?」
「興奮しているようだから、一先ずこの二人から離れようか。」

いつの間に陣形を組んだのだろうか。
優しい表情で近づいて来た羽京の示す先には、スタンリーと龍水以外の者達が円を組んでいた。
羽京は、そうと思われないよう身体で龍水とスタンリーからAを遮る。
握られていた手は、自衛隊で鍛えられた腕を渾身の力で振り下ろし、叩き落とした。


Aは羽京とゲンの間に座らされた。
この二人なら、早々に手を出すことはしないだろうとの判断だ。

Aは、龍水から受け取った紙を握りしめており、未だ顔の熱が引いていないようだ。

「せ、千空君。」
「これ、本当なの?」

これとは言わずもがな、条件の事だろう。

「ああ、確信はねえがな。」
「だがこの空間、蹴っても殴ってもびくともしねえ。」
「あるのは空気と、俺らだけだ。」
「そんな中、そいつがでてきた。」
「他に、やりようもねえ。」

「そ、れじゃ…。これ…やるの?」

Aの目が、羞恥に染まった。

「それしか、ねえな。」

真っ赤になってぷるぷると震え出したAを見て、両隣から声がかかる。

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坦々麺(プロフ) - ずっと待ち望んだ続きが…!今回もすごく最高です…… (3月9日 20時) (レス) @page14 id: 14a944a4f2 (このIDを非表示/違反報告)
幸実(プロフ) - もちろんです!こちらこそ採用されるだなんてとっても嬉しいですキャ─(*ᵒ̴̶̷͈᷄ᗨᵒ̴̶̷͈᷅)─♡ぜひ使っちゃってください!(*っ´∀`)っこちらこそありがとうございます(*´˘`*)♡ (1月7日 11時) (レス) id: 2921ed131c (このIDを非表示/違反報告)
Jane Doe(プロフ) - 幸実さん» 幸実さん!ナイスアイディアありがとうございます!!それ使わせてもらってもいいですか?本編完結まで宙ぶらりんもアウトな気がしていた中で最高の啓示です笑ありがとうございます!! (1月7日 2時) (レス) id: 980e4647fc (このIDを非表示/違反報告)
幸実(プロフ) - 頬とか瞼とか手の甲などが書かれていて唇だけはくじには入ってなくて主人公ちゃんはホッとしてる、千空達はちょっと残念に思うそんなオチはいかがでしょう? (1月2日 7時) (レス) id: 2921ed131c (このIDを非表示/違反報告)
幸実(プロフ) - はじめまして。本編も含め全話を毎回楽しんで読ませてもらっています。キスをしないと出られない部屋のオチなんですけど、キスの場所の指定くじを引く感じはどうでしょう!? (1月2日 7時) (レス) id: 2921ed131c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Jane Doe | 作成日時:2023年10月19日 19時

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