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キスをしないと出られない部屋12 ページ13

やけに、あっさりだね。

そう瞳を細めたのは、事の成り行きを見守っていた羽京だ。
この世界で初めてゲンに対峙してから、羽京は幾度となく静かなやり取りを行ってきた。
その分、他の者よりもゲンのそういった部分に触れてきた。
だからこその、違和感。
だがそれも、今は杞憂だとかぶりを降った。


まあ、それよりも、今は。


かさり


羽京は自分の手の中にある紙を見た。
その書き記してあるものを見るだけで、身体の奥底から湧き上がってくる熱がある。
羽京はそれを振り払うように、強く逆の手を握った。

想像するな。

羽京は、Aを好いている。
それこそ、多方面の意味で、Aと繋がりたいのだ。

ただ、

同時にこの気持ちを、彼女自身を大事に、大事にしたいのである。
だからこそ、

この湧き上がる劣情に、それを誘発するようなこの状況に、羽京は目を瞑りたかった。
またもう一つ、羽京が発言しないのには訳があった。

ゲンが降りたのは、きっと確信しているからだ。
この状況、このメッセージ。
これで誰か一人だけなんて有り得ない。
だったら、

ちらりと、不安しかないというような顔の彼女を見る。


大事なのは僕がAに、どうするか、だよね。


どうか飲まれませんようにと、疼く腹の底でそう思った。







俺は、2番か。

思ったよりも早いなと、司は自分の纏まらない意識の中で思った。
だってそうだろう。
こんな訳のわからない場所で突きつけられたのは、自分の想い人に口付けろという、降って湧いたような謎の相手からの指示だ。

司はずっと、Aを大事にしてきた。
大事に、大事に想ってきた。
触れる時は、不快にならないだろうかと最小限に。
それでも己の心は彼女に触れているという一点だけで踊った。
言葉をかける時は、己の欲を出さないようそこだけは最大限に気をつけて。
心のままに言葉を発したらとんでもないことを言ってしまうのは分かっていた。

それだけ、彼女が大切で大事で、何が何でも離れたくないのだ。

なのに、

かさり、と自分の手の中にある小さな紙を一撫でした。

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坦々麺(プロフ) - ずっと待ち望んだ続きが…!今回もすごく最高です…… (3月9日 20時) (レス) @page14 id: 14a944a4f2 (このIDを非表示/違反報告)
幸実(プロフ) - もちろんです!こちらこそ採用されるだなんてとっても嬉しいですキャ─(*ᵒ̴̶̷͈᷄ᗨᵒ̴̶̷͈᷅)─♡ぜひ使っちゃってください!(*っ´∀`)っこちらこそありがとうございます(*´˘`*)♡ (1月7日 11時) (レス) id: 2921ed131c (このIDを非表示/違反報告)
Jane Doe(プロフ) - 幸実さん» 幸実さん!ナイスアイディアありがとうございます!!それ使わせてもらってもいいですか?本編完結まで宙ぶらりんもアウトな気がしていた中で最高の啓示です笑ありがとうございます!! (1月7日 2時) (レス) id: 980e4647fc (このIDを非表示/違反報告)
幸実(プロフ) - 頬とか瞼とか手の甲などが書かれていて唇だけはくじには入ってなくて主人公ちゃんはホッとしてる、千空達はちょっと残念に思うそんなオチはいかがでしょう? (1月2日 7時) (レス) id: 2921ed131c (このIDを非表示/違反報告)
幸実(プロフ) - はじめまして。本編も含め全話を毎回楽しんで読ませてもらっています。キスをしないと出られない部屋のオチなんですけど、キスの場所の指定くじを引く感じはどうでしょう!? (1月2日 7時) (レス) id: 2921ed131c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Jane Doe | 作成日時:2023年10月19日 19時

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