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キスをしないと出られない部屋11 ページ12

「あー…!!」

その瞬間、千空は苛立ちを隠せないように片手でがしがしと頭をかいた。
全員の表情、スタンリーの行動、自分のものと異なる内容が書かれている紙。
ここから導き出せる推論は、一つ。

千空がAの前に立つ。
その瞬間、A以外の全員が何とも言えない表情になった。

「あー、A。」

「お前の相手は、」


「全員だ。」




「…え?」





男達は理解した。
紙にはそれぞれ、どこかしら指定された箇所があるのだと。
しかもそれは、頬や手など、そんなレベルの場所では無さそうだ。

「あー、じゃあ。」
「一先ず順番、決めちゃおっか?」

そんな状況を見兼ねたゲンが、手に7本の細長い紙を持って言った。
どうやら、その紙を引いて順番を決めようというのだ。
だがそれには、当然この声が上がる。

「待ちなよマジシャン。」

なーに、考えてんのかねえ。

スタンリーだ。
普段ならば静観し、状況を見極めるスタンリーも、この時ばかりは積極的に声を上げた。
この陣営において、スタンリーはどうしたって不利な立場だ。
そんな中で自分の譲れぬものを手にするには、ひたすら自己の意志を伝えるしかない。

「あんた、マジシャンって言うくらいだから手先なんて器用なんだろ?」
「イカサマなんてし放題じゃん。」

更に重ねるように声がした。

「くじ、か。」
「ゲン、貴様の腕は相当なものだ。それは誰もが知っている。」
「だからこそ、この状況下で素直にその提案を受け入れる者などいないと、分かっているのだろう。違うか?」

過去に同じ手口で一杯食わされている龍水は殊更慎重にゲンを見た。

「えー?この状況でそんなこと言っちゃう?」

ゲンは心外だと言うように、顔に不満を貼り付けた。
だがそんなもの、目の前でじと目でこちらを見る男達に、通じるはずも無い。
ゲンは一度ため息を吐くと降参というように両手を見せた。

「分かった、分かったよ。」
「じゃあほら、」

そう言い一枚の紙を手に取る。

「7番、最後。」
「で、」

そして、残りの紙を千空へ握らせた。

「くじ引きは千空ちゃんがやる。」
「俺はくじに触れないし、なんならもう順番も決まってる。」
「どう?これでもうなーんにも、心配することなんてないでしょう?」

そう言うと、ゲンは困ったように笑った。

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坦々麺(プロフ) - ずっと待ち望んだ続きが…!今回もすごく最高です…… (3月9日 20時) (レス) @page14 id: 14a944a4f2 (このIDを非表示/違反報告)
幸実(プロフ) - もちろんです!こちらこそ採用されるだなんてとっても嬉しいですキャ─(*ᵒ̴̶̷͈᷄ᗨᵒ̴̶̷͈᷅)─♡ぜひ使っちゃってください!(*っ´∀`)っこちらこそありがとうございます(*´˘`*)♡ (1月7日 11時) (レス) id: 2921ed131c (このIDを非表示/違反報告)
Jane Doe(プロフ) - 幸実さん» 幸実さん!ナイスアイディアありがとうございます!!それ使わせてもらってもいいですか?本編完結まで宙ぶらりんもアウトな気がしていた中で最高の啓示です笑ありがとうございます!! (1月7日 2時) (レス) id: 980e4647fc (このIDを非表示/違反報告)
幸実(プロフ) - 頬とか瞼とか手の甲などが書かれていて唇だけはくじには入ってなくて主人公ちゃんはホッとしてる、千空達はちょっと残念に思うそんなオチはいかがでしょう? (1月2日 7時) (レス) id: 2921ed131c (このIDを非表示/違反報告)
幸実(プロフ) - はじめまして。本編も含め全話を毎回楽しんで読ませてもらっています。キスをしないと出られない部屋のオチなんですけど、キスの場所の指定くじを引く感じはどうでしょう!? (1月2日 7時) (レス) id: 2921ed131c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Jane Doe | 作成日時:2023年10月19日 19時

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