星を掴んだ【松川一静】 (ページ5)

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___星を掴めそう、と彼女は言った。

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前言撤回。やっぱり彼女はだいぶ酔っている。

この時の俺は、そう思った。

もしくは彼女はロマンチストか、と。

「へへ、ごめんなさい、変なこと言って」

「…いや、別に」

気まずくなったのか、

彼女はそこで一気に酒を飲み干した。

…最後の一本。

「あ、ない……」

ビニール袋に手を伸ばした彼女だったが

そこにはもう、空になった缶が重なって

乾いた軽い音を立てるだけだった。

腕時計を見れば、

とっくに日付が変わっていた事に気がつく。

「そろそろ、お開きにしましょうか」

「…そう、ですね……」

「こんな時間に一人でいたら、危ないし」

「……」

少し寂しそうな顔をする彼女を横目に

俺はスっとベンチから立ち上がった。

立ち上がれば、

川の流れる音が急に聞こえたような気がして

ベンチというその場所が

別世界として切り取られていたのではないか、

と俺を錯覚させたのだった。

「楽しかった」

ポロリと零れた言葉は、

なんの飾り気もない、素直な心の声。

「松川さん」

「？」

「私も、楽しかったです」

「……ん、」

「またいつか…… 」

_____またいつか、会えたらいいですね

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『またいつか』

なんて抽象的な、何の保証もない言葉

それらにかたどられて、

こうした出会いたちは、色褪せていく。

星の数ほどある出会い。

でもそれが一つ、特別なものになったとしたなら

それは出会いという始まりではなく、

その過程に何かがあるんじゃないだろうか。

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彼女との日々は

俺に、そんな感情を与えてくれた。

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