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たわいもない会話をしながら
行く宛もなく歩いていた……つもりだったけど、
「あ、着いた着いた」
「ここ?」
彼女にはどうやら行き先があったようで。
着いたのは、とある河川敷。
もちろんこんな時間に誰かがいるはずもなく
川の流れる音だけが耳に入ってくる。
昼間のここの景色は
世間話をするおばさん達、遊びに夢中な小学生、
立ち寄ることもなく通り過ぎる通行人。
そんなごくありふれたモノだ。
けれど
「…一静、覚えてる?」
「当たり前ですとも」
俺たちにとっては、少し特別な場所で。
そこは、『人で溢れた河川敷』ではなく
『俺とAが出会った場所』なのだ。
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「なんか、変な感じするね」
そっと俺の服の袖を掴んでそう言ったAは
澄みきった、星の煌めく空を眺めていた。
「何が?」
「いや、私たち、結婚するんだなーって」
「それ何回も聞いたけど」
「うん。なんかやっと実感湧いたかも」
「ドレスの試着した時に言ってなかったっけ?」
「あ…言ったかもしれない。」
「困りますよ、奥さん」
「……へへ、なんか照れるね」
出会った時はまさかこんな風になるとは
思ってもみなかっただろう。
そもそも人と人の出会いなんて
ほとんどが 沢山あるうちのたかが一つで、
ビビッと運命的な何かを感じて始まるものなんて
無いに等しいんじゃないか、と俺は思う。
「ねえねえ」
「ん?」
「ちょっと、昔の話、しない?」
そう言って 彼女は近くのベンチを指さした。
出会った頃は塗装されたばかりでピカピカだったそれも、少しだけ色が落ち始めていた。
初めて会った時、Aが座っていたベンチ。
「いいよ」
ひょいと座った彼女の隣に
続けるようにそっと、自分の腰を下ろした。
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るとぴ(プロフ) - 同期になりたい人生だった (2019年8月28日 23時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:PON酢 | 作成日時:2018年10月28日 18時