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【知念語り】
「ごめん、迷惑かけて……」
目を覚ましたひかは、何度も何度も、そう言った。
いくら僕たちが、大丈夫、気にしないでって答えても、そんなのまるで聞こえていないみたいに。
どうしていいのか、もう、わからなかった。
泣いちゃダメだ、と思っているのに、どうしても視界が滲んで。
ひかに背を向け、ごしごしと目をこすって顔を上げたら、雄也がすっと立ち上がったのが見えた。
「……そだ、ちょっとプレゼントあるの」
「え……?」
ぼんやりと顔を上げたひかが、不思議そうに雄也を見やる。
「はい。俺の使い古しでごめんね。」
少しアンティークの雰囲気を持ったそれは、ここに来る前に、僕に見せてくれたもの。
「……ラジオ?」
「あ!よくわかったね!」
すぐに言い当てたひか。
雄也は嬉しそうに笑っていた。
「ちょっとボロいけど、まだちゃんと使えるから。暇なとき聞いてみて?」
ひかはじっとラジオを見つめていた。
言葉はなかったけど、だけど。
表情が少しだけ、明るくなったように見えて。
――ひかのスマホは、今、病院の管理下にある。
自 殺の方法を調べたり、精神的に良くない情報を得る可能性があるら。
勿論希望すれば、医師の同伴のもと、いつでも使うことができるのだけど、それもひかが断っていたらしい。
そればかりか部屋のテレビすらも全くつけず、毎日死んだように眠ってばかりいる、と……
だから、ラジオ。
元々ひかはよく聞いているみたいだったし、テレビほど強烈に情報が入ってくるわけじゃないから、名案だと思った。
ここから、良い方向に変わればいい。
「ありがと……。」
―――ほら、ヒカリが見えた。
「……あれ、なに」
ひかに聞かれて、はっと思い出す。
テーブルの上の小箱。
「ああ……。」
「そうだそうだ、知念見せてあげなよ!」
なんだかすっかり楽しそうな雄也に急かされて、箱を取りに行く。
うーん。
喜んでくれるかな。
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ピカる(プロフ) - ぽよぽよさんが書いてる小説が大好きでいつも楽しみにしながら読んでいます!これからも頑張ってください! (2018年2月5日 23時) (レス) id: 82281a3ae1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽよぽよ | 作成日時:2018年2月1日 21時