じゃんぷ夢小説４ (ページ32)

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【八乙女語り】

夢か、現実かもわからない渦の中。

不気味な静寂。

吐き気がするほどの恐怖と、不安と。

「……っあ、」

突然聞こえた轟音に、振り返る。

どす黒い波が、今にも飲み込まんばかりの勢いで自分に迫っていて。

「っあ、うっ……ああ……」

異様に重い体を必死に動かし、どうにか逃れようと走る。

来るな、来るな、来るな――――――

「うわあああああああ!」

渦の中に、沈んでいく。

息が、できない……――――

「た、………」

手を伸ばしても、届かない空。

「たすけ、て……」

―――そのとき、暗闇の中に見えた一筋の光

「……る…………」

遠くで、声が聞こえる。

「……かる……ひかる……」

誰……？

俺を、呼んでる……？

「光!!」

―――――

はっ、と目を覚ますと、
どす黒い渦はどこかに消えていて。

目の前には、心配そうに俺を見る、よく知った顔。

「や、ぶ……？」

声に出したら、涙が溢れて。

自分でも驚いて、でも、どうにもできなくて。

薮は少し驚いたような顔をしたけど、そのままなにも言わず、俺の髪をそっと撫でた。

温かい静寂が、流れる。

「……ごめんな」

「……え」

突然そう呟いた薮は、髪を撫でる手を止めた。

「なにも、わかってなかった。俺。」

なんでお前が、そんな顔すんの……―――

「な、……」

「でも、…………今更、ずりーのかも、しれねえけど。
お前がまた、戻ってくんの待ってるから」

―――それは、初めて見る薮の顔で。

泣き笑いの中に、強さと優しさをこれでもかと詰め込んでいた。

「……や、ぶ」

「、ん？」

「……ありが、とう」