“ここにいる” ページ49
「圭人待てって!」
高木と別れた2人は、足跡のあった付近の茂みを探していた。
歩き出してからというもの、圭人は半ば譫言のように2人の名前を叫びながら文字通り駆けずり回っていた。
雨はようやく止んだもののぬかるんだ足場は不安定で、何度も転びそうになっては体勢を立て直し、を繰り返す。
「待てって!」
ようやく追い付いた裕翔が、腕をつかんで制止した。
「やめてよ!離して!」
「ちょっと落ち着けって!そんなんじゃお前まで怪我する!」
「なんでそんなこと言うの?怪我してるんでしょ?光くんも知念も。早く、早く見つけなきゃ……」
「……大丈夫だよ。ここまでみんなちゃんと生きてきたんだから、そんな簡単にやられないから。」
そう優しく笑う裕翔の手は、少し震えていた。
「お前まで怪我したら、誰が助けられんの?……期待してるよ、体力バカ」
「……ひどい……笑」
「ほら、行くぞ」
――ああ…中島裕翔、どんだけカッコいいんだよ……
そうして2人は、再び歩き出した。
「あれだけ雨降ってたんだ、雨宿りできそうな場所、探したんじゃないかな。
大きな木の下とか、そうだな、あと、洞窟とか……」
裕翔の冷静な分析が光る。
なるほど、と呟く圭人の足がふと、止まった。
「圭人?」
「……ねえ、なんか臭いしない?」
「臭い?」
「焦げ臭いような……燃えてるような……」
「え?」
雨上がりの独特な臭いはするものの、圭人の言うそれは、裕翔には全くわからなかった。
「……こっち!」
「えっ、おい!」
圭人は歩き出した。先程とは違い一歩一歩踏みしめる着実な足取りに、裕翔は半信半疑ながらもそのあとを追う。
「あった!」
茂みを掻き分け着いたその場所は、雨宿りには最適な小さな洞窟だった。
そして、その洞窟の前に積み上げられた枯葉の山。
大雨で濡れたそれはずっしりとした重みさえ感じられたが、その山の間からは僅かに煙が上がっていた。
「……なんで……?」
そう口にした瞬間、2人ははたと顔を見合わせた。
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作者名:ぽよぽよ | 作成日時:2017年9月8日 18時