じゃんぷ夢小説２ (ページ34)

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続　小さき戦士ページ34

「、…ちねん」

「なにっ…」

「怪我、ない…？大丈夫…？」

「ば…っ、ばかじゃないの？人の心配、してる場合？!」

すっかり涙声になっている知念を、
八乙女は優しく宥めた。

「泣くなよ…大丈夫だから」

「そんなのっ…信用できないっ…」

―――全て、思い出した。

足を滑らせた自分を八乙女がかばって、一緒に崖から落ちたのだ。

少し足に痛みはあるものの、ほとんど無傷な自分と、岩肌に残る生々しい血の痕が、全てを物語っていた。

「ヒカっ…」

額に当てたタオルは、既に真っ赤に染まっていた。
どうしよう、止まらない、止まらない…―――

必死に堪えようとするが、込み上げてくる涙で、すっかり前が見えなくなる。

そのとき、震える自分の腕を、八乙女の右手が、ふわり、包んだ。

「な、に…」

「本当に、大丈夫……？」

顔色は悪いものの、その瞳はしっかり知念の姿を捉えていた。

その瞳に、少しだけ冷静さを取り戻す。

―――そうだ、泣いてる場合じゃない

激しさを増していく雨。

暖かい島とはいえ、これ以上八乙女を、この豪雨にさらす分けにはいかない。

辺りを見回す。

転がり落ちたこの場所は、見渡す限り鬱蒼とした茂みばかりで、雨をしのげる場所などありそうもない。

何かないの？

何か、何か、……！！

転がる岩に軽く足をかけ、少し遠くを覗きこむと、視界の端に小さく映った、洞窟。

あった…！

あそこなら大丈夫、行こう…！

ただ、問題は移動の手段だった。

数mもない場所ではあったが、怪我をしている八乙女をむやみに動かしたくはなかった。

自分の身長をここまで恨んだことはない。
立場が逆なら、背負うことができるのに…

―――違う

出来もしないことを考えても仕方ない。

冷静に、冷静になるんだ。

―――昨夜、7人で話し合いをしたばかりだった。
口火を切ったのは高木で。

ここでの生活も長くなり、疲れと、不安と、皆が冷静さを見失いつつある、と。

この極限の状態で、その焦りが、本当に命取りになることも出てくる、と。
高木は１つ１つ丁寧に言葉を選びながら、全員に語りかけた。

これから先、何があっても、まずは焦らず、一度立ち止まって冷静になること。

そして、それがたとえ、誰かを思うがゆえのものであったとしても、その場の感情だけですぐに突っ走らない。

相手も、自分も、どちらも大切にして、そのとき一番必要なことを考える。

―――焦るな、焦るな。