小さき戦士 ページ33
――雨の音が、聞こえる
「んっ……」
薄く靄のかかった世界。
遠くで、雷鳴が聞こえた。
―――あれ、僕…どうしたんだっけ…？
雨が、激しさを増していく。
背中に突き刺さるその感覚を徐々に確かなものとして感じながら、靄のかかった思考がゆっくりと晴れていった。
「――った…」
足、痛い…
なん、で…？
えっ、と、食料探しに山に―――――
はっ、と飛び起きた知念は、足の痛みも忘れ、慌てて辺りを見回した。
ヒカ、どこ、ヒカ………？
――探し求めていた姿は、岩影にぐったりと横たわっていた
「ヒカ!」
知念の声に薄く目を開けた八乙女は、彼の無事を確認すると少し安心したように笑ったが、すぐに痛みに顔を歪めた。
額がぱっくりと割れ、痛々しい傷口から、夥しい血が吹き出している。
「ヒカ!!ヒカ!!」
すっかり気が動転した様子の知念は、なんとか出血を止めようと首に巻いていたタオルを押し当てた。
どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう…!
突然の雨、果実集めをしていた二人は、すぐに山を降りる選択をした。
中腹までは順調に下っていた。
―――ほんの一瞬の、出来事だった
岩肌むき出しの険しい山道。
雨に足を取られ、バランスを崩した知念。
体勢を立て直そうと強く足を踏み込んだのだが、その足場が一気に崩れ落ちた。
体が、宙に浮く
―――ああ、僕死ぬんだ
次に来る衝撃に備えて、強く目を閉じた。
だが、感じたのは痛みではなく、強く、優しく、包み込まれる感覚。
ヒカ…？
―――そこで、意識はぷつんと途切れている
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作者名：ぽよぽよ | 作成日時：2017年9月8日 18時
