8 ページ8
「……Aにとって僕は、いじりがいのある人間なんだろうなと…毎度毎度、僕の気持ちも知らないでからかってくる…」
話している内に、どんどんうつ向いていく様子のイライに美智子は呆れていた。
「そんなんあんたが正直になればええだけの事やろ。言葉のまま受け止める事は出来んの?」
「それが出来ないからこうして言っているだろ…」
うだうだと埒の明かない話をしていると桟橋からセルヴェが顔を出す。
「やぁイライ、気分はどうだい?」
仲間が捕まっているというのに、場にそぐわない、とても明るい声で尋ねてきた。
「…先程美智子にも言われたばかりだが…最悪だ」
「それはなによりだ」
この現状を見て、その発言は如何なものなのかと困惑するが、試合前のやりとりもあってイライはあえて触れないでおいた。
「それより早く助けてくれないだろうか?」
呑気に話などしている場合ではないとそう告げているのに、何故かセルヴェは顎に指を添え、考える仕草をし始める。
「うーん…美智子さん」
「何や?」
「今はもう暗号機が残り一つになり、それもすぐ終わるようだが、ここは穏便に事を運んでもらえないだろうか?」
セルヴェが持ち掛けた案は、要はもうこちらの勝ちが確定だから見逃してくれとハンター相手に交渉をしているのだとイライは捉えた。
しかし…
「何を言うてるの…うちはAが泣いていた事がどうしても見逃せないんや。泣かせはったコイツを飛ばさな、気が済まんさかい」
その言葉にイライは勢いよく顔を上げる。
「Aが……泣いていた……?」
「そうや、あんたのせいであの娘は泣いていたんや」
「………ッ!」
ギチッと縄が悲鳴を上げる。
「セルヴェッ!早くこの縄を解いてくれっ!!」
イライは身体に縄が食い込むのも構うことなく暴れ出し、声を張り上げた。
「何をする気だい?」
静かな声でセルヴェが問う。
「Aに会いにいくっ!!」
「会ってどうするんだい?」
セルヴェは淡々と告げながら、このやりとりでさえもどかしいという苛立つ様子のイライの言動を静かに見ていた。
「まずは…謝りたい…ッ!それから…僕の気持ちを伝えたいッ!…泣かせるつもりなど…なかったのに…」
最後の方はもう消え入りそうな程か細かった。
106人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
虚無僧(こむそう)(プロフ) - HIROさん» ご感想ありがとうございます!飛される時のイライ君の声が好きです。コメント本当にありがとうございました!やる気パワーが満ちてきます\(^o^)/ (2019年6月23日 3時) (レス) id: bf4e788763 (このIDを非表示/違反報告)
HIRO(プロフ) - すごい好きでした……!美智子さんが怒ってくれてイライくん飛ばすとことか最高です(_.ω.)_:∵グハッ!! (2019年6月22日 20時) (レス) id: 1744d7d8f6 (このIDを非表示/違反報告)
虚無僧(こむそう)(プロフ) - はるさめさん» 御感想ありがとうございます。久々の更新になりましたが、こうしてコメントをいただけると、書いて良かったと報われます( ;∀;)ありがとうございました! (2019年6月11日 15時) (レス) id: bf4e788763 (このIDを非表示/違反報告)
はるさめ(プロフ) - 最高でした...!最初はどうのなるのかと思ったんですがラストのイライくんめちゃめちゃカッコよかったです...。ページを進めるのが楽しみでスラスラと読めました。とても好きです。 (2019年6月11日 1時) (レス) id: 8a587298f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:虚無僧(こむそう) | 作成日時:2019年6月11日 1時