・ ページ8
・
「…え、どゆこと？これがお前んち？」
「ちげーよ。俺の家はもう少し先」
オーバーサイズの半袖を揺らして、
くすくすと笑うひかる。
バスを降りて、こっち、と
ひかるが進むまま着いて行ったら、
到底人が住んでいるとは思えない
荒れ果てた一軒家に辿り着いた。
「絵、見たいって言ったじゃん。来て」
外れかけたボロボロの門を、ギィ、と大事そうに開く。
それからスタスタと鍵のかかってない引き戸を引いて、
ひかるは中に消えてってしまった。
「え、ちょ、待って」
慌てて後を追う。
玄関で靴を脱ぐべきか迷ったけど、
ひかるの靴が無かったからそのまま上がり込んだ。
もう暫く住んでいないのだろう、
泥棒も入り尽くしたような荒れた廊下。
電気は恐らくもう通ってなくて、
どこからともなく差し込む月明かりだけが頼りだ。
その先、恐らくかつて居間があったであろう
開けた部屋にひかるは立っていた。
恥ずかしそうに手招きしている。
導かれるまま、ひかるに近付く。
俺が横に立ったのを確認して、
ひかるが持ち込んでたんだろうか、
パチリと手持ちライトのスイッチを入れた。
そして息を呑む。
そこは、ひかるの国だった。
スケッチブックの中に閉じ込めていた頭の中を
ひっくり返して辺り一面ぶち撒けたかのように、
壁や家具にひかるの描いた絵が散らばっている。
「ここんちのじーちゃんもう施設入るらしくって。
身寄りもねーから、
記念に描いてくれって言われてさ」
「おまえのじーちゃんってこと？」
「いや、知らねえじーちゃん」
何となく猫のようなやつだなんて思っていたけれど、
これじゃ本当に猫みたいだな。
俺に出会ったように、誰にでも出会って、
するりと懐に忍び込んで、
そしてまたするりと抜け出していく。
俺はまだ死なないから、まだ側に居てくれる？
重いラブソングみたいな言葉が
漠然と浮かんで慌てて消した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 207人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ponpoco(プロフ) - しろくまさん» しろくまさま、ありがとうございます(;_;)しつけ糸くらい頼りない伏線でしたが、楽しんでいただけていたら嬉しいです。個人的にも色んなybhkさん書けて楽しかったです。笑 しろくまさまのアツアツも楽しみにさせていただいてます〜！ (2021年5月26日 0時) (
レス) id: 3a76e6c7e4 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - 完結おめでとうございます。何度も最初から読み直しました。ひかちゃんのミステリアスな雰囲気が素敵なお話で、とっても楽しめました。タイトルとストーリーのリンクもさすがです！！次回作も楽しみにしています。 (2021年5月17日 0時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
ponpoco(プロフ) - ナギ.×さん» 初めまして。勿体ないお言葉…ありがとうございます！物語はぼちぼちクライマックスです、結末まで、楽しんでいただけたら嬉しいです！ (2021年4月23日 23時) (レス) id: a43e57129c (このIDを非表示/違反報告)
ナギ.×(プロフ) - 文章が凄く好きです。更新楽しみにしてます。 (2021年4月20日 21時) (レス) id: d0b22c7bf3 (このIDを非表示/違反報告)
ponpoco(プロフ) - しろくまさん» しろくまさま、ありがとうございます。今回いろんな空気のybhkを書きたくて、学生にリーマンに、って欲張ってしまってます。笑 楽しんでいただけたら嬉しいです！（私はしろくまさまのアツアツにドキドキしてます〜笑） (2021年3月1日 21時) (レス) id: e5d2a264c6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ponpoco | 作成日時：2021年2月28日 13時
