夜のバス、銀河鉄道 _ybhk+ytin

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「あ…」



やべ、声出しちゃった。
ひかる起きちゃうかな。

もぞもぞと動いた布団の塊は、また静かになった。



ベッドの中で珍しくひかるより先に目が覚めて、
ふと思い出したんだ。

夜のバスで寝顔が見れなくなったこと、
やっと見れたこと。



ひかるの寝顔は好きだ。
だって、寝てるうちはどこにも行かねーからな。

あと、アレも好き。ひかるにじっと見つめられんの。

コイツはなんかたまに、
自分の方を見て欲しそうにこっちを
めっちゃ見てくるのに、
俺が見るともう、一切見なくなることがある。

俺を求めて、でも
俺が傍に居ることが分かったら安心して。

そんでとっとと自分の世界に引っ込んでってしまう、
そんな風に。そんな奴が。



そんな奴がまた離れていってしまう可能性って、
一体どんくらいあるんだ？





眠る鼻先に人差し指で触れる。



俺が欲しい？ひかる。
俺は欲しいよ。お前が。



熱い眼差しを送っても、冷たい視線を送っても。

うんともすんとも、穏やかな寝息を立てている。


面白くなくて、ぴっ、と鼻をつまんでやったら、
眉根を寄せてやっとゆっくり目を開いた。



「…やぶ？ん…おはよ…」



俺を見て、嬉しそうに笑って、また目を瞑る。
安心したように。また夢の中へ。



そんな奴が。

そんな奴が、また離れていってしまうなんて
そんなこと。





鳥の鳴く声、車のエンジン音。

閉め切った窓の外から、動き出した街の音。



布団ごと腕を回して抱き締めたら、
衣ずれの音だけがこの部屋で動いた。





外とは違う時間が流れている。
世間とは違う関係が横たわっている。

だけど俺はこれで良い。これが良い。ひかるが良い。
お前もそう思ってる可能性、一体どんくらいあるんだ？
やぶが良い、と。やぶだけで良い、と。

それだけで俺は。

それだけで。




　

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