夜のバス、銀河鉄道 _ybhk+ytin

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「よ」



次の日、いつものようにバスに乗り込んできた奴を
知らんぷりはできなくて、軽く左手を挙げてみる。

するとこくりと頷いて、意外にも俺の隣に座った。




「…あそこ通ってんの？」


後ろを指差す。
奴はまたこくりと頷いた。


「そっか」

「…」


沈黙が訪れて、はたと気付く。

こいつ俺の隣来ちゃったら、
絵、描きづれーんじゃねえの。




「…名前なんつーの？」

「え？おれ？」

「他に誰が居んだよ」

「…ひかる」

「ひかるか」


何か似合うな、なんて思ってたら、
こっち見て口をムズムズさせてる。

咄嗟にやぶだよ、と答えて、
あ、俺も下の名前で答えりゃ良かった、
なんて変な顔して笑ってしまった。


「俺のことは気にせず描いてよ」

「…おれが気になる」


はは、そうだよな、って笑ったら
またムズムズさせるから、
何か言うかと思ったけど
そのままずるずるとスケッチブックを引っ張り出した。


「今日は何の絵？」

「…勉強しろよ」

「ふふ」


いつも帰り道くらいぼーっとしたくて、
バスでは何にもしてなかった。

けどひかるに絵を描いて欲しくて、
適当に単語帳を開く。



thrilled
ワクワクする

thump
ドキドキする



ちらり隣を覗き見る。
こんなに近くで初めて見た。


thrilled thump


スケッチブックとお前。


覗き見る比率が傾いていくのは
きっとそう遠くなくて、溜息が出る。



　

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