夜のバス、銀河鉄道 _ybhk+ytin

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「うーん…我ながらキモい…」


俺の小さなぼやきが駅の壁に吸い込まれていく。
さっきからソワソワソワソワ。
待ち合わせの20分も前に着いてしまった。



「中島さん？」

「え？」


勢いよく振り向くと、
そこには伊野尾さんが立っていた。


わあ…。私服そんな感じなんだ…。
ロイヤルブルーのウールコートが
めちゃくちゃ似合ってる…死ぬほど似合ってる…！

スーツも綺麗だったけど、
私服は私服で可愛いなあ…。

デートって良いなあ…。はあ…。


って違う！
俺は男！伊野尾さんも男！しっかりしろ！中島ゆう


「どうかしました？」

「あっいや！全然！行きましょうか！」


ふふ、と笑って、楽しみですね、なんて
覗き込んでくるから、
あと1ミリ俺の常識がズレていたら
傍目気にせず抱き締めていたと思う。



・



「いやー、期待値超えてきましたね。
　俺最後らへんの雨のやつ好きだったなあ。
　中島さんは？お気に入りありました？」

「俺はやっぱり、入り口のメインのやつですかね」


嘘ですごめんなさい。

終始伊野尾さんばかり見てた俺は、
正直展示なんてほとんど見れてなかった。

入り口のやつは今回の展覧会の目玉で、
色んなビジュアルに使われてるから
記憶にあっただけです。すいません。ぺこり。


「あれも良かったですよね、
　やっぱりでっかいスケールで見ると
　違って見えました」


そう言った伊野尾さんは、
アルコールの入った赤い目でうっとり笑うから…


もー！何でカウンターしか空いてないんだよ！

…これは欲をかいた俺が悪いんだ。


美術館を出て、飲んで帰りましょうか、ってなった。

土曜の夜だからどこも混んでて、
そこらのチェーンの居酒屋にでも行けば良いのに、
デートっぽさを求めて
小洒落たスペイン料理屋を指差してしまった俺。

だからデートじゃないんだよ！と
セルフビンタしながら、
やっぱあっちで、と振り返ったら、
もう伊野尾さんが店に半分足を突っ込んでいて、
結果はこの通り。

男2人で雰囲気の良いカウンターに通されました。


もういいや！今日はデートと思って楽しもう！と
半分ヤケになって諦めてからはホント楽しくて、
気付いたら俺は、もう一軒行きます？と
上機嫌で伊野尾さんを誘っていた。



「…じゃあ、俺んちここから近いんで、
　うちで飲み直しませんか？」



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