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…
「お客さん、ここで良いですか?」
「…あ、はい。ありがとうございました」
タクシーを降り見上げるは、
首が痛くなるほどのタワーマンション。
ただでさえ魅力的なマンションのエントランスは、
ここに山ちゃんが住んでいると思うと
余計に魅力的に見えてしまうからどうしようもない。
もう、どうしようもない。
頭を一振りして、
言われた部屋番をオートロックに打ち込んだ。
それから何度目かのオートロックを経て、
やっと山ちゃんの部屋の前まで辿り着く。
ここに来てようやく尻込みし始めた俺を
知ってか知らずか、ひとりでにドアが開いた。
数年ぶりに見る山ちゃんは、
相も変わらず、綺麗な茶色の瞳をしていた。
・
「…裕翔くんならこれ、どう変える?」
俺を部屋にあげてから無言を貫いていた山ちゃんが、
ぞんざいにノートPCの液晶をこちらに向ける。
今持っている案件なのだろうか。
国民的人気バンドの名前が目に入る。
デカい案件だな…。
けど、どこか違和感を感じる。
「…何か違う」
「…え」
「”どう変える?”って…山ちゃんの作り物として?
それとも俺のものとして?」
「…っ」
息を飲みこちらを見上げる茶色い瞳。
いやいや、山ちゃん。
俺どんだけ山ちゃんのこと見てきたと思ってんの。
どんだけ山ちゃんの生み出すものひとつひとつに
ワクワクさせられてきたと思ってんの。
分かるよ。
これが ”山ちゃんぽくない” ことなんてすぐに。
わざとなのか、たまたま調子が悪いのかは…
分からないけどさ。
「…俺の制作物として」
液晶を見つめたまま、山ちゃんは言う。
それなら簡単だ。
山ちゃんならここに白は持ってこない。
…赤?
いや、黒だな。
置かなくても分かる。
置いてみたら…ほら、これだ。
マウスから手を離し液晶を山ちゃんに向ける。
まあ途中から見えていたのだろう、眉一つ動かさず、
「…じゃあ裕翔くんのなら?」と続ける。
「俺なら…ちょっと机借りてい?」
ダイニングテーブルに置かれたノートPCを、
このまま立ちながら操作するクオリティなんて
山ちゃんは求めるはずもないから、
隣の部屋に見えたデスクトップを指差す。
「好きに使って」
そう言ってシッシッと手を払う山ちゃんの横顔は、
何かを諦めた顔のように見えた。
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みつあめ(プロフ) - ponpocoさん» よ、読まれていたとは…笑 作者さまの足元にも及びませんが、いのひかの普及をと思っております…笑 ほんわかした雰囲気がいのひかっぽくてすごく好きでした(*´ `*) 続編楽しみにしてます! (2020年11月5日 22時) (レス) id: 19e769908e (このIDを非表示/違反報告)
ponpoco(プロフ) - みつあめさん» 初めまして。ありがとうございます!hkinいいですよね…みつあめさまの寝ても覚めても(特に1話目…!)好きなので嬉しいです…涙 ラブコメチックで書いてて楽しかったので、続き書けたらなとも思ってます。 (2020年11月1日 22時) (レス) id: e5d2a264c6 (このIDを非表示/違反報告)
みつあめ(プロフ) - はじめてコメントします。「きみはまほうつかい」のひかいのちゃんが可愛くて大好きです。やまださんのツッコミ、ほんわかハピエン…全て最高でした…!(もちろん他カプのお話も大好きです)いつも素敵なお話をありがとうございます。 (2020年10月24日 16時) (レス) id: 19e769908e (このIDを非表示/違反報告)
ponpoco(プロフ) - ねむりさん» 初めまして。身に余る素敵なコメント・・ありがとうございます!これからも読み返したく思っていただけるようなお話をお届けできるよう、頑張ります(;_;) (2020年10月14日 0時) (レス) id: 474aa8db21 (このIDを非表示/違反報告)
ねむり(プロフ) - コメント失礼します!どの作品も綺麗で素敵で感動しました!とくにたかいののforge-me-notは最高でした。もう美しすぎて何度も読み返しました笑これからも素敵な作品作り頑張ってください! (2020年10月6日 11時) (レス) id: 48a0a8985c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ponpoco | 作成日時:2020年8月24日 0時