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「じゃあ、またね伊野尾くん」
「…だから、もう来ないんだってば」
いつものように、店の出口のドアまで見送る。
雑居ビルの2階にあるこのスタジオは、
エレベーターを使わずに階段から帰る人が多い。
伊野尾くんもまたそのうちの1人だった。
「伊野尾くん!」
数段下から伊野尾くんが振り向く。
…ああ、泣いてしまう前に引き留められて良かった。
「azarea、っていうんだよ」
「…へ?」
「その花。azareaっていうの」
頭いっぱいにハテナを浮かべた表情。
花言葉詳しいんじゃないの?なんて意地悪は言えない。
だって伊野尾くんは、淋しい花言葉しか知らないから。
「色は白だよ」
「…ぅえ?」
訳分かんない、とでも言いたそうに、
涙もすっかり引っ込んで眉根を寄せて見上げる。
「俺が伊野尾くんを見るとこういう気持ちになる。
だから早く伊野尾くんもそうなれば良いな、
って意味を込めたから。
じゃあ、" また "ね。伊野尾くん」
自分でもキザすぎて、恥ずかしくなって扉を閉めた。
数秒経って、トントンと階段を下りる音が聞こえてくる。
その音はいつもよりゆっくりとしたペースで。
きっと、聡明だけど臆病な伊野尾くんは、
今スマホでazareaの花言葉を検索してるから。
確かめないと、不安なんでしょ?
良いよ、いくらでも付き合うよ。
これからいくらでも付き合える。
でも歩きスマホは危ないよ。
階段を下りながらなんて余計に。
その綺麗な身体で、怪我でもしたらどうするの。
まあ今日だけは目を瞑ろう。
だって、そうやって検索した伊野尾くんは、
絶対に今下りた階段を駆け上がってきてくれるから。
3
2
1
トントントン…!
あはは、ほら、ね。
…白いazareaの花言葉はね、伊野尾くん。
"あなたに愛されて幸せ"
これ、今の俺の気持ちに、笑っちゃうくらいぴったりなの。
伊野尾くんも、早く同じように感じてくれたら嬉しい。
fin.
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みつあめ(プロフ) - ponpocoさん» よ、読まれていたとは…笑 作者さまの足元にも及びませんが、いのひかの普及をと思っております…笑 ほんわかした雰囲気がいのひかっぽくてすごく好きでした(*´ `*) 続編楽しみにしてます! (2020年11月5日 22時) (レス) id: 19e769908e (このIDを非表示/違反報告)
ponpoco(プロフ) - みつあめさん» 初めまして。ありがとうございます!hkinいいですよね…みつあめさまの寝ても覚めても(特に1話目…!)好きなので嬉しいです…涙 ラブコメチックで書いてて楽しかったので、続き書けたらなとも思ってます。 (2020年11月1日 22時) (レス) id: e5d2a264c6 (このIDを非表示/違反報告)
みつあめ(プロフ) - はじめてコメントします。「きみはまほうつかい」のひかいのちゃんが可愛くて大好きです。やまださんのツッコミ、ほんわかハピエン…全て最高でした…!(もちろん他カプのお話も大好きです)いつも素敵なお話をありがとうございます。 (2020年10月24日 16時) (レス) id: 19e769908e (このIDを非表示/違反報告)
ponpoco(プロフ) - ねむりさん» 初めまして。身に余る素敵なコメント・・ありがとうございます!これからも読み返したく思っていただけるようなお話をお届けできるよう、頑張ります(;_;) (2020年10月14日 0時) (レス) id: 474aa8db21 (このIDを非表示/違反報告)
ねむり(プロフ) - コメント失礼します!どの作品も綺麗で素敵で感動しました!とくにたかいののforge-me-notは最高でした。もう美しすぎて何度も読み返しました笑これからも素敵な作品作り頑張ってください! (2020年10月6日 11時) (レス) id: 48a0a8985c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ponpoco | 作成日時:2020年8月24日 0時