深〜いため息 ページ43
「あ〜、手がつっちゃいました...」
見ると、右手をブンブン振りながら
そう口にするアイツが
「チャンミン大丈夫？」
「大丈夫か？シム」
「大丈夫じゃありません。痛くて箸が持てません」
ん？箸が持てない？
「じゃあ、左手で食べれるようにスプーン持って来てあげるよ」
「スプーンはいらないです」
あっ、そうなんだ
あとご飯だけだから残すのかな
もったいないけど...
「じゃあ、トレー置いたままでいいよ。
私が片付けるから」
「何言ってるんですか？まだ食べますよ？
お米を残したら目が潰れちゃいます。だから...」
イヤな予感...
「Aさん、食べさせて下さい」
やっぱり...
「無理だよ...」
だってここ社食だよ？
ただでさえ私達今注目されてるのに...
「ダメですか...？」
でた！すがるような目
アイツの十八番！！
「あと二口くらいだからいいじゃないですか」
え？まだ半分くらい残ってるのに二口？
・・・ってそうじゃなくて
二口だからとか、そうゆう問題？
「いいじゃないか、竹内。
食べさせてやれよ(笑)」
宮本さん...
爽やかな笑顔でなんて余計な事を
宮本さんの言葉にアイツはブンブン頷いた
仕方ない、二口で終わるんだし
覚悟を決めて(大げさ)
アイツの口元へご飯を差し出した
「はい、チャンミン」
「あっ、俺もう行かなきゃ。お先に」
その直後、なんと宮本さんが
社食から出ていってしまった
あっ、そんな...！
ちょっとちょっとちょっとぉ〜！
これじゃあただの馬鹿夫婦じゃん！
焦る私とは対照的に
嬉しそうにご飯を頬ばるハムスターなアイツ
もっぎゅっ、もっぎゅっ、もっぎゅっ...(笑)
そんな笑顔でゆっくり噛んでないで
もう一口も早くっ！
「あ〜ん(笑)」
パクッ...
終わった...
「美味しかったぁ(笑)」
ほんの数分でぐったり疲れてしまった私の隣で
「ごちそうさまでした！」
アイツは元気よく手を合わせた
「じゃあAさん、お先です」
「あっ、あぁ...うん」
あっ、そうだトレー
顔を上げると
余裕の表情でトレーを持つアイツの姿が...
...え？
痛くて箸も持てないんじゃなかったの？
・・・ヤられた
「ごちそうさまでしたぁ〜(笑)」
社食のおばちゃんに、ご機嫌な様子で
声を掛けるアイツの後ろ姿を見ながら
「はぁ...」
私は心の底から深〜いため息をついた
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作者名：ami
| 作成日時：2013年7月19日 13時
