よく目にする光景 ページ39
アイツと夫婦だと皆に報告してから数日が経ち
噂されるのも大分気にならなくなってきた
...ふぅ、疲れた
休憩を貰ってバックルームに入る
すると...
「この時計は
Aさんとお揃いなんですよ？(笑)」
陽気なアイツの声が聞こえてきた
またか...
ここ最近よく目にする光景
それは、嬉しそぉ〜に
お揃いの時計を自慢するアイツの姿
私としては
恥ずかしいからやめて欲しいんだけど
今日の餌食は(失礼なヤツ)・・・
何と宮本さん！
うわぁ...大丈夫だよね
恐る恐る顔を覗かせた私に気付いたアイツが
「A、こっち来て」
手招きして私を自分の隣に呼び寄せた
A？
なぜ会社で呼び捨て？
そう思いながらも言われた通り隣に座ると
「Aも宮本さんに時計を見せて」
私にも制服の袖で隠れている時計を出せと
アイツが催促してきた
何だかバカップルみたいで
もちろん嫌だったんだけど
「竹内のも見せてくれよ(笑)」
アイツに合わせてくれる優しい宮本さんに言われ
仕方なく時計を見せた
「へぇ〜、全く同じデザインなんだな」
それに素直に感心する
どこまでも優しい宮本さん
「そうなんですよ(笑)」
一方それはそれは嬉しそぉ〜に頷く
ご機嫌なアイツ
「・・・・」
そして冷めた表情を浮かべる私
「それから文字盤の裏なんですけど」
え？文字盤の裏？
アイツはいそいそと時計を外し
宮本さんに見せた
「toujours tous les deux...
フランス語で"いつも二人で"って意味なんです。
頼んで刻印してもらったんですよ」
・・・ちょっとちょっとそんな事
初めて知ったけど？
「へぇ...二人はホントに仲がいいんだな。
なんだか羨ましいよ」
宮本さんの言葉にアイツはかなり満足気
でも次の瞬間
「俺も竹内みたいな可愛い嫁さんが欲しいよ」
「え...」
宮本さんの言った要らぬ一言に
一瞬にしてその顔から笑顔が消えた
「Aさんみたいな...
可愛いお嫁さんですか？」
プルプルと震える、アイツの低い声
ヤバイ・・・
...とその時
「お〜いシム
休憩時間とっくに過ぎてるぞ〜」
ロビー側のドアが開き、アイツを呼ぶ声が
・・・ほっ、よかった
「は〜ぃ...」
それにアイツは弱々しく返事をすると
ソファに座る私と宮本さんを
恨めしそうに何度も振り返りながら
ロビーへ出ていった
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作者名：ami
| 作成日時：2013年7月19日 13時
