心の内 ページ46
リー、リーン、リー...
虫の音が響く縁側沿いの庭
月明かりがバンビの頬を照らして
そこで光る涙を指先で優しく拭ってあげると
同じ様にバンビも真似をする
「「...ふっ(笑)」」
二人で見つめ合って笑い合って
そして思い出した
「そう言えば茂さんから預かってるんだった」
「はい、コレ」と、今度はちゃんと
サンダルを履いて渡した袋の中を覗き
バンビはしばし固まった
「...どうして、コレが？」
「茂さんがくれたの、バンビが探してたから」
「茂さんが？」
バンビが目を丸くしてこっちを見た
「うん、家にあったんだって」
「家にあった...
じゃあ僕は何の為に今まで...」
そう言って元々撫で肩の肩を
ガックリと落とすバンビ
「もしかして
今までずっと探してたの？」
「うん、結局見つからなかったけど」
「そんな、私はてっきり...」
「てっきり...？」
バンビが首を傾げてこっちを見た
「てっきり私から逃げ出したかと」
「僕が？」
心外だと言わんばかりの顔
「だって酷い事言っちゃったし
まさかまだ探してるなんて思わないじゃない」
「うん...」
バンビが沈む声で頷いた
「僕もショックで
一度はそれどころじゃなくなって...」
「うん...」
そうだよね...
きっと、一生忘れられない光景
バンビが見たあの剥製は
その時のショックを思い出したのか
バンビはぼんやりと庭を見つめた
「でも、"コレが現実"だって
辛そうに訴えるAを見たら、絶対に見つけないとって」
絶対に...
「幻の...いちじくだって言われてるのに？」
バンビがこっちを見た
「うん、だって...」
だって...？
「Aには
笑っていて欲しいから...(笑)」
そう言って
どこか切なく微笑むバンビの顔を見て
再び込み上げる涙
「幻の、いちじくかぁ...(笑)」
バンビが今一度
広げた袋の中を覗き込んだ
よく見ると、その靴もデニムも泥だらけで
上に羽織ったシャツなんて
所々破けていて
「Aのお母さんが教えてくれた
Aの大好物...(笑)」
「・・・・」
この時、ボロボロの服で
満足そうに袋を覗くバンビの姿を見て
ようやく彼の心の内を全て理解する
ただ届けたかったんだ、私に
"母の愛"と"笑顔"を
昨夜からずっと...
「バンビ...」
「...ん？」
袋から顔を上げたバンビの唇に
思いの丈を込めて、そっと唇を重ねた
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ami(プロフ) - まこさん» まこさん、夏目漱石のエピソード、素敵ですよね。流石偉人は違います。妄想当初はもっとムードある流れで使おうかと思ったのですが、気付いたらこんな感じに(笑)拾って頂けて嬉しかったです！ありがとうございます。引き続きお付き合い下さいね。 (2021年7月14日 17時) (
レス) id: abcc065ec9 (このIDを非表示/違反報告)
まこ(プロフ) - amiさん！更新ありがとうございます。まさか。ここで大好きな夏目漱石の訳に会えるなんて泣素敵ー！これからも楽しみにしています。 (2021年7月14日 16時) (レス) id: c043fdfdb9 (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - tamaさん» tamaさん、切なさ感じて頂けて嬉しいです。バンビはどこへ行ってしまったのか。今後の更新で明らかにしていきますね。お話に共感して下さり励みになります。 (2021年7月6日 15時) (レス) id: abcc065ec9 (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - 切ない…バンビどこ行っちゃったのかな。 (2021年7月6日 0時) (レス) id: 2b3dad8b2a (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - 千衣さん» 千衣さん、それはもう「人にあらず」でしょうか(笑)悪の経典は観てないですが。←更新楽しみにして下さって励みになります！ありがとうございます。 (2021年7月5日 22時) (レス) id: abcc065ec9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ami
| 作成日時：2018年1月16日 1時
