初めての ページ29
「じゃあ仕事に行って来るけど、お昼はさっき言ったようにお弁当を温めて食べてね」
「うん...」
「帰りはバンビの服を買ってからになるから少し遅くなるけど、帰って来たらご飯作るから」
「...？」
言ってる意味がよくわからないのか
首を傾げて不思議そうに玄関ホールに立つバンビに
最後は「誰か来てもここは開けなくていいから」と告げて外へ出た
「すっかり遅くなっちゃった」
慌てて鍵をかける
朝からおにぎりなんて作って食べたから...
それだけじゃない
メイクの際もまとわりつくバンビに時間を取られて、いつもより大分遅くなってしまった
軒先に干された
私の物より明らかに大きいバンビの服
それを横目に見ながら車に乗り込む
瞬間、バスローブ姿で玄関に佇んでいたバンビが頭を過り
不安を覚えつつエンジンをかけた
「あっ、そう言えば」
バンビに電話は出なくていいと言うのを忘れていた
と言うより、電話そのものについて説明していないから
万が一掛かって来た時、その音にびっくりしてパニックを起こしてしまうかもしれない
チラッ...
もう出ないといい加減間に合わない時間
時計を目にして一瞬躊躇い
でもすぐに怯えたバンビの顔が頭に浮かび車を降りた
.
ガラッ！
「そう言えば言ってなかったんだけど・・・」
勢いよく開けたドアの向こう
壁を背に体育座りをしているバンビが目に入り、思わず言葉に詰まる
「...な、なにやってるの？そんなところで」
「ん？えっと...
何をすればいいかわからないから、座って待ってる」
座って待ってるって
「...何を？」
「A(笑)」
"A"
聞かなくても
何となくわかっていた答え
それを聞いて、一気に熱くなる胸
「・・・・」
何をすればいいかわからないって
確かにその通りかもしれないけど
どうしていつも
あなたって子はそうやって...
「・・・・」
「ん、A？
しごと、行かないの？」
そうやって
いとも簡単に、私の心を揺さぶるの？
「...？」
不思議そうにこっちを見上げるバンビを見下ろしながら
「...あ、もしもし？多田ですけど」
気付くと私は
手にしたスマホで
生まれて初めて"ズル休み"の電話を掛けていた
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ami(プロフ) - まこさん» まこさん、夏目漱石のエピソード、素敵ですよね。流石偉人は違います。妄想当初はもっとムードある流れで使おうかと思ったのですが、気付いたらこんな感じに(笑)拾って頂けて嬉しかったです！ありがとうございます。引き続きお付き合い下さいね。 (2021年7月14日 17時) (
レス) id: abcc065ec9 (このIDを非表示/違反報告)
まこ(プロフ) - amiさん！更新ありがとうございます。まさか。ここで大好きな夏目漱石の訳に会えるなんて泣素敵ー！これからも楽しみにしています。 (2021年7月14日 16時) (レス) id: c043fdfdb9 (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - tamaさん» tamaさん、切なさ感じて頂けて嬉しいです。バンビはどこへ行ってしまったのか。今後の更新で明らかにしていきますね。お話に共感して下さり励みになります。 (2021年7月6日 15時) (レス) id: abcc065ec9 (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - 切ない…バンビどこ行っちゃったのかな。 (2021年7月6日 0時) (レス) id: 2b3dad8b2a (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - 千衣さん» 千衣さん、それはもう「人にあらず」でしょうか(笑)悪の経典は観てないですが。←更新楽しみにして下さって励みになります！ありがとうございます。 (2021年7月5日 22時) (レス) id: abcc065ec9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ami
| 作成日時：2018年1月16日 1時
