フラれる覚悟 ページ26
「そしたら...
Aさんの言う通りだった」
「え...？」
「ストレスがたまってくると...
特に恋人と別れた時なんか、そんな風にしちゃう事が多いんだって」
確かにあの報道があった少し前
恋人と別れたと騒がれていたような
「正にあの時がそうだったらしくて...」
やっぱり...
「だからもしかしたらそーゆー意図もあったかもしれないって...ヒロさん、そう言ってました。酒も、あんなに弱いヤツじゃなかったって...」
そこまで言うと
アイツは小さくため息をついた
「でも、庇うわけじゃないけど...」
けど...？
「仕事に対する姿勢は、ヒロさんも一目置くほど人一倍プロ意識が高いんです」
顔を上げてそう言い切ったアイツが
すがるような眼差しを私に向けた
「それは一緒に仕事をして僕にも伝わってきたし...だからこそアキさんのそんな一面に気付けなかった」
話し終わると
今度は力なく項垂れてしまった
そう、だったんだ...
そうだったんだね
それならもう、私は...
「でも、そんなのは理由になりません。
何があっても僕だけはAさんの事信じなきゃいけないのに...と言うよりそもそもAさんはあんな事言う人じゃなかったのに、僕が言わせたんだ、僕が...」
アイツの拳が
膝の上のズボンをぎゅっと握り潰した
チャンミン...
「ごめんね、Aさん。
今回も僕はAさんをたくさん気付けた...」
確かに、今回は別れを意識するほど
アイツの言動に
そして周りの言葉に傷付いた
でももう、わかってくれたから
だから...
「僕、今日はホントに
フラられる覚悟で来たんです」
「え...」
フラれる覚悟...？
思わぬ事を口にしたアイツが
再び顔を上げこっちを向いた
私を見つめる
眉毛を下げたアイツの、潤んだ瞳
ゴンドラを囲うイルミネーションを反射して
キラキラ輝いて...
「だから...」
だから...？
「それでも僕といたいなら...」
いたいなら...？
「キス、して...」
最後は掠れた声でそう言ったアイツの
目の前で静かに閉じられた睫毛は
微かに、震えていた
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作者名：ami
| 作成日時：2016年3月21日 17時
