賭けだった ページ23
「はぁ〜、それにしてもうらやま！」
次の瞬間、耳を澄ます私の隣で
彼女達の一人が一際大きな声を上げた
「もうすぐクリスマスじゃん？
こんな彼氏いたらマジ最高だよねー」
「ホントホント！一体どこのどいつだよ。
一般人の分際であんなイケメンと付き合ってるの」
...ほらね、やっぱり
「...フッ(笑)」
予想通りすぎて思わず鼻が鳴った
...それにしても
「一般人の分際で」って
何でそんなに上から目線なの？
「一般人」だと...
アキさんと違って
何もかも普通の「一般人」だと
アイツと付き合っちゃいけないわけ？
「...ッ！」
あまりの言い草に徐々に腹が立ち
気付くとこんな事を口にしていた
「どこのどいつって
私だけど、アイツと付き合っているのは」
.
「「...は？」」
突然会話に入ってきた女にビックリしたのか
一瞬真顔になった後
二人はバカにするような視線を
一斉に私に投げ掛けた
「頭おかしいんじゃないの？」
「ねー、何言っちゃってんの。笑えるんだけど(笑)」
私の事を、まるで品定めでもするかのように
足の先から頭の天辺までくまなく視線を滑らせ
お腹を抱えて笑う二人
やっぱり、私じゃおかしい...？
私じゃアイツに似合わない？
...でも
それならそれでもういい
もう、アイツとは別れるから
「・・・・」
依然として私を嘲笑う二人から視線を逸らし
再び俯いた
「はぁ〜(笑)
それにしても遅いねミキ達。何やってんだろ」
「ねー、電話してみる？」
.
...ずっと考えていた
あんな風に、醜い感情を露にする自分を
受け入れて貰えないのなら
少しも耳を傾けて貰えないのなら
この先一緒にいるのは無理なのかもしれないと
ある意味、昨夜のアレは賭けだった
お似合いだと騒がれるアキさんに
勝手に対抗心を燃やした私の、女の賭けだった
アイツだけは
アキさんでなく私を選んでくれるって
アイツだけは...
でも、違った
だからもう...
...ポタッ
止める事のできない涙が
見つめる先のアスファルトに
小さくシミを作った正にその時
「...え、マジで？」
「本物？」
訝しげな声を上げる女子高生のセリフと共に
見慣れたスニーカーが視界の端に入ってきた
「...ッ」
...だからどうして？みなは？
顔を上げなくてもわかる
俯く私のすぐそこに立ちすくむのは
「...Aさん」
ここには現れるはずのない
私の名前を呼ぶはずのない
アイツだった
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作者名：ami
| 作成日時：2016年3月21日 17時
