やり過ごせない涙 ページ18
"バイトが終わるのが多分同じくらいの時間だから、もし先に着いたら駅で待ってて下さい"
アイツにそう言われ
12月の、既に日が沈んだ駅前で待っていると
たまたま隣に居合わせた数人の女子大生から
またしてもアイツの話題が耳に飛び込んできた
「そー言えば釈明したね。
酔ってる自分を介抱しただけで彼は友人の一人だって」
そう...なんだ
誤解だとはわかっていても
胸がスーッと軽くなった
「でもホントかな、それ」
え...？
「だってアキってザルでしょ？
前にテレビでそう言ってるの見たけど」
...そう、なんだ
じゃあホントのところは一体...
再び胸がズシッと重くなった
「でも確かチャンミンも一般人の彼女と付き合ってなかった？」
今度はドキッとなる胸
「えー、そんなのとっくに別れてるでしょ」
え...
「だってアキだよ？
明らかにこっちのがお似合いじゃんね」
明らかに、お似合い
今のは、流石にキツかったかも
しかも別れてるって...
完璧な彼女と比べたら
そう思われても仕方がないのに
「...ッ」
聞こえて来た言葉に
涙が出そうになって慌てて俯いた
"シム君の事だから誤解だとは思うけど、何かあったら言いなよ"
さっき、ここに来る途中みなから電話があった
"実はさっき知って...
アイツ電話に出ないんだけど、ちぃ、お前大丈夫か？"
同様に隼人からも
...大丈夫
私達の事をわかってくれている人はちゃんといる
俯き、今にも零れ落ちそうな涙を
何とかやり過ごしていたら
「えっ、ちょっとマジで！？」
「本人？本人！？」
騒がしい声と共にアイツが現れた
「ごめん...Aさん、お待たせ」
...どうして、今来るの？
今顔を上げたら
泣きそうになってるの、バレちゃうのに
ギュッと歯を食いしばった
「Aさん...？」
「え？なに、知り合い？」
「マジで？」
涙で歪んだアイツの白いスニーカーを
ただじっと見つめる私の顔を
アイツが下から覗き込んだ
「...ッ、もしかして泣いて・・・」
次の瞬間
辺りに響き渡る悲鳴と共に
「ごめんAさんっ、ごめんね...？」
アイツが私を
力いっぱいその胸の中へと抱き寄せた
...チャンミン！
「ちょっ...何コレー！？」
「誰あの子ー！」
依然として悲鳴を上げる
騒がしい彼女達の声を聞きながら
痛いくらい私を抱き寄せるアイツの腕の中で
込み上げてくる涙を堪えるのに
必死だった
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作者名：ami
| 作成日時：2016年3月21日 17時
