二度目の旅行14 ページ2
その後
何度も「度が合ってないからいい」と断る私を
アイツは何度も断り返して
結果
「うっ...Aさん
僕ちょっとフラフラしてきました...」
何軒かお店を回っている間に
アイツはすっかり具合が悪くなってしまった
ほらね...
だから言わんこっちゃない
でも全ては
私との時間を守る為にやってくれた事
文句なんて言ったらバチが当たる
「じゃあ、あそこで休もっか？」
ちょうど少し先に
大きな木を囲うように
ベンチが配されてる場所があるのを見つけた
.
「...なんだか、すみませんAさん」
「え？」
「せっかくの旅行なのに...」
私に膝枕して貰って横になるアイツは
眼鏡を外してすっかり落ち込んでしまってる様子
その髪を、優しく撫でてあげる
「どうして？
これもこの旅の思い出のひとつでしょ？(笑)」
「え...」
「それに、その眼鏡のお陰で
誰にも邪魔されずに過ごせたし(笑)」
ホントに、誰も声を掛けてこなかった
「Aさん...」
アイツがゴロンと体勢を変えて
仰向けになった
「...ん？」
何か言いたげに
じっと下から私を見つめるアイツの瞳
「...じゃあ」
じゃあ？
「キスして？」
「え...」
キス...？
予想もしてなかった言葉に
ドクンッと胸が踊った
「誰にも邪魔されずに過ごせたご褒美に...
キスして？Aさん」
髪を撫でていた私の右手を掴み
あどけない顔でキスをねだるアイツ
こんな場所で
周りに人もいるのに
そんな顔されたら
そんな...
子供のような瞳で真っ直ぐ見つめられたら
「...うん」
私は断れない
ちゅっ...
「ふふっ、ありがとうございます(笑)」
でもやっぱり恥ずかしくて
ほんの一瞬触れただけの唇に
「ご褒美の、キス...(笑)」
アイツは右目を細めて、嬉しそうに笑った
愛しい...
目の前のアイツも
所々に射す眩しい木漏れ陽も
音もなく流れていく時間も
私達を包む空気も
もうそのすべてが、愛しい...
「私こそ...ありがとね(笑)」
掴まれた右手にぎゅっと力を込めて
アイツの右手を握り返した
その様子を
少し離れた場所に偶然居合わせたアキさんが
興味深げに眺めていたことに
「じゃあ、もういっかいキスして？」
「えっ、それは...ムリだよ///」
「どうして？
減るもんじゃないし、いいじゃないですかぁ」
目の前の愛しい人しか
見えていなかった私とアイツは
気付きもしなかった
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作者名：ami
| 作成日時：2016年3月21日 17時
