何て言えばいいのか ページ9
職場の最寄り駅のベンチ
涼さんから手渡された検査薬を手にして
それでもまだ決心がつかない私の肩を
「おいで...大丈夫だから」
そう言って涼さんが抱き寄せた時
RRRR...
鞄の中のケータイが鳴った
「もしかして彼氏？」
「うん...」
預けていた体を離して取り出した
ケータイのディスプレイには
「チャンミン」の文字
「出ないの？」
涼さんにそう聞かれて
意気地無しの私は、ほんの一瞬迷ったけど
「...ううん、出る」
久しぶりに掛かってきた電話に
出ることにした
「もしもし...？」
「もしもし、Aさん？」
「うん...」
電話の向こうから聞こえて来るのは
少し低いアイツの声と、騒がしい喧騒
「今、どこにいるんですか？」
「今は...駅だよ。仕事が終わって...」
「誰かと...一緒にいるんですか？」
「え...」
「いるんですかっ？」
一瞬言葉に詰まった私に
再びアイツが少しキツイ口調でそう聞いた時
後ろから聞こえるアナウンスが
電話の向こうからも同じように聞こえてきて
もしかして...
「新崎さんと、いるんですよね...？」
やっぱり...！
私の予想は的中した
「...ッチャンミン、ここにいるのっ？」
「ええ、いますよ」
慌てて辺りをクルクル見回した
「それより、質問に答えて下さい」
「なに...？」
アイツの姿を捉えられないまま
その低い声に聞き返す
「新崎さんは、本当に...女性ですか？」
少し掠れた声でそう尋ねるアイツに
何て答えればいいのかわからない
だってアイツは実際に
「私達」を見ているんだから
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作者名：ami
| 作成日時：2015年11月10日 12時
