僕の幸せ ページ8
「...違う、違うよ」
「え？」
大介の言う通り
ヤキモチ焼きで、犬にまで本気で嫉妬する僕は
決して理想の彼氏なんかじゃない
「チャンミンさん？」
いつだってAさんを泣かせてばかりだし
理想の彼氏なんかじゃ、決してないんだ
「でも、噂されるなんて...
そんな事も全部...ホントに全部承知で声を掛けたんです、あの時。だから大丈夫です(笑)」
今だって、こんな風に周りの様子に気を遣える程
余裕なんてまるでないんだから
Aさんと一緒にいる時は
いつだってAさんしか見えてなくて
でもそれが、何より僕の幸せで
友達に本気で呆れた顔をされるくらい夢中だった
「あ、着きましたよ(笑)
降りるんですよね、ここで」
やっぱり僕は
Aさんじゃなきゃダメなんだ
Aさんじゃなきゃ...
「セラ...」
「ん？何ですか？」
セラの弾んだ声を聞きながら降りた駅
僕は自分の気持ちをはっきりと自覚して
「ごめん、やっぱり......ッ！」
Aさんが好きだから一緒にはいられないと
そう伝えようとしたんだ
「...ん？チャンミンさん？」
「・・・・」
でも、そうできなかったのは
線路を挟んだ向かいのホームで
知らない男とピッタリ寄り添ってベンチに座る
Aさんの姿を目にしてしまったから
「どうしたんですか？」
...親密そうに顔を寄せて
Aさんの肩を優しく抱き寄せるその男が
僕に女性だと嘘をついた「新崎さん」なの？
ねぇ、Aさん
答えてよ、今度は嘘をつかずに
「...後ろ、後ろに何かあるんですか？」
僕は振り返ったセラの後ろに
小さく見える二人から
一瞬たりとも目を逸らさずに
ズボンのポケットに入れたケータイに
手を伸ばした
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作者名：ami
| 作成日時：2015年11月10日 12時
