可愛いこの子と ページ2
Aさんが僕に嘘をついた
"...ッホントのホントに、女性ですかっ？"
"うん、女性だよ"
それも迷いなく、はっきり
僕に嘘をついた
「ふふっ...
シたくないんだって。僕とは(笑)」
ならその「新崎さん」とは、シたいの？
Aさんが女性だと言い切った
新崎さんとは...
「...ッそうなの？Aさん」
「あの、何してるんですか...？」
突然背後から聞こえてきた声に
「え...」
僕はゆっくり振り返った
「あ...」
「借りてた本を返しに来たら
偶然エレベーターに乗り込むチャンミンさんを目にして...」
午前の講義は、出たはいいものの
何ひとつ頭に入って来なくて
昼休み、逃げるようにここへやって来た
僕のお気に入りの場所
ここ、図書館の書庫に
「声かけようか迷ったんですけど
何だか様子がおかしかったから...」
心配そうに僕を見つめるのは
昨日映画館で会ったあの子だ
「大丈夫...ですか？」
大丈夫ですかって...
この子いつからここにいたのかな
緩くおだんごにした髪から垂れる後れ毛が
窓から入る風にそよそよとなびく様子を見ながら
そんな事を考えていたら
「あ、余計なお世話ですよね。
すみませんでしたっ...！」
深々とお辞儀をした彼女が
くるっ！と僕に背を向け立ち去ろうとした
「待って！」
慌ててその背中を呼び止める
「え...」
ただ、聞いてみたかったんだ
Aさんと同じ女性である彼女に
僕のこの情況は
もう絶望的なのかどうか
「ちょっと聞きたい事があるんだけど」
「...何、ですか？」
...にも拘わらず
少し不安そうに僕を見つめる彼女に
「君、名前何ていうの？」
思わず彼女自身の事を聞いてしまったのは
なぜなのか
正直、自分でもよくわからない
「あ、木内です...木内セラ///」
「そう...可愛い名前だね(笑)
あ、隣座る？イス持ってくるよ」
「えっ！そ、そんなっ...///」
ねぇ、Aさん
僕は犬に嫉妬するくらい
Aさんが好きなんだよ？
例えAさんが
僕をもう好きじゃないとしても
バカみたいにAさんだけ、好きなんだ
でも、でもね...
「はい、どーぞ(笑)」
今はこの子と一緒にいたいんだ
「あ、じゃ、じゃあ失礼しますっ...///」
「ふふっ(笑)」
僕の言葉にイチイチ顔を真っ赤にする
可愛い、この子と一緒に
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作者名：ami
| 作成日時：2015年11月10日 12時
