話の種になった客 ページ1
"だから、シたくないの。私は..."
ひどい言葉を吐き捨て
アイツの手を振り払った翌日
職場に行くと
憂鬱な気分の私とは対照的に
フロントサービス課のバックルームは
昨夜現れたらしい"怪しい客"の話題で
賑わっていた
疲れきった顔でソファに座る
夜勤明けのドアマン小田さんが対応したらしく
「顔はホントにヤバイくらい整ってるんだよ。でもアレはココがいっちゃってるね」
そう言って
呆れたようにトントンと頭を指差した
そんな小田さんを横目に見ながら
ソファに腰を下ろしメモ帳を広げた
「そんなにヤバかったんですか？」
「そうだよ市川。終いには何言っても突っ立てるだけで、ホントにある意味営業妨害だったぜ...」
最高のサービスを提供するホテルと言えども
一歩バックルームに入ってしまえば
その辺の学校の教室と何ら変わらない
おかしな人がいれば、例え客だろうと
こうやって話の種にされてしまう
ホテルマンという
華やかな職業に憧れていた部分もあったから
入社したての頃は
正直、戸惑いを感じた部分もあったっけ
「でも勿体ないですよね。そんな格好イイのに」
「ホントだよ、スタイルもモデル並みによくてさ。似てるんだよ、最近人気のアイツ...何だっけ、あ"〜！名前が浮かばない！」
「小田君、そーゆの興味ないからね。ホテルマン失格〜」
「あ"〜ここまで出てるんだよ、ここまで！」
今日のスケジュールをメモに写しながら
頭を抱えて唸る小田さんの声を聞く
「でもうちらも気を付けた方がいいわね。
その客、うちの社員を訪ねて来たんだから」
「そうそう。チーフにはもう報告済みだから、その内本人にも注意するよう話がいくんじゃないのか」
「はぁ、ホント怖い...
おかしな客に目つけられたらどうしよう」
「こればっかりは仕方ないよな。
よっぽど怪しくない限り、こっちは客を選べないんだから」
「はぁ...そうですよね」
目の前のソファで
そんな会話が繰り広げられる中
今日のスケジュールをメモに取り終えた私は
静かに席を立った
お腹に違和感を感じて
もしかして...
足早にバックルームを後にした私は
聞く事ができなかった
「あっ！思い出したモデルの名前！
シム・チャンミンだ！(笑)」
そう叫んだ、小田さんの嬉しそうな声を
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作者名：ami
| 作成日時：2015年11月10日 12時
