何より先に話す事 ページ22
「まだまだ話さなきゃいけないこと、たくさんあるでしょ？二人で、ちゃ・ん・と！話しなさいよ？(笑)」
涼さんがいなくなった駅のロータリー
「とりあえずこのままじゃ風邪引くからどっか...」
そう言ったアイツが
涼さんから手渡された傘の
その「大部分」を私の方へ傾けながら
キョロキョロと辺りを見回した
こういう
さりげない優しさにアイツの愛を感じて
また、泣きそうになった...
「僕の家じゃ遠いし...
やっぱりAさんの家がいいかな。それで大丈夫ですか？」
「...あそこ」
「えっ？」
「あそこがいい...」
今すぐアイツとゆっくり話したかったし
何よりひどい言葉で
アイツを傷付けてしまった事を後悔していた私は
駅の裏にある
いわゆるそういうホテルを指差した
「...え、でもあそこは・・・」
「いいの。あそこがいいの...」
「・・・・」
恥ずかしくて俯いたまま
アイツの服の裾を引っ張るのが
精一杯だった私の肩を
「...わかりました」
アイツが優しく抱き寄せた
もちろん、そんなところ初めてだった私は
部屋に入るまで俯きっぱなしで
それに気付いたアイツは
ずっと肩を抱いていてくれた
ガチャ...
中に入ると
ベッドの横の壁が一面鏡貼りになっていて
あれじゃあ
シてる最中丸見えじゃん...///
その光景に何だか無性にドキドキしてしまった
「Aさん
シャワー浴びてきて下さい」
そんな私を他所に
アイツはあくまで「話をする」つもりらしく
その様子に私も徐々に落ち着きを取り戻した
.
「チャンミンも浴びてきて？」
「はい」
私に続いて
同じくずぶ濡れになっていたアイツも
シャワーを浴びて
ベージュのフワフワした
タオル地のバスローブに身を包み
二人並んでベッドに腰を下ろした
ベッドとテレビと
そして小さなテーブルがあるだけの部屋
枕元には"アレ"が入った
小さなかごが置かれていて
何よりもまず先に
私が話さなければいけない事は何なのか
まるで私に訴え掛けているようだった
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作者名：ami
| 作成日時：2015年11月10日 12時
