会いたくなくて ページ39
あれから、どうやっても涙は止まらなくて
両目を腫らしたまま出勤した
職場の人には
アレルギーが出たのかもしれないと誤魔化し
一人になるとどうしても込み上げてくる涙を
必死に堪え仕事をこなした
「お先に失礼します」
いつもより長く感じた仕事を終え
従業員通用口に向かう
するとちょうど出勤してきた斉藤さんと
行き会った
「お先に、失礼します...」
この目を見て何か言われてもやだし
足早にその横を通り過ぎようとしたら
「外で待ってるよ？」
そう声を掛けられた
「えっ、待ってる？」
何の事かわからなくて立ち止まり聞き返した
「うん、多分...彼氏かな？」
「えっ...」
彼氏？彼氏ってアイツ...？
途端に心臓がドクドクと音を立て始めた
「目...腫れてるみたいだけど関係あるの？」
斉藤さんにそう言われて
もう、何度目かわからない涙が込み上げ
「...お、お先に失礼します」
逃げるように通用口に向かった
でも...
あのドアを開けたら
アイツがいるかもしれないと思ったら
なかなかドアのそばまで行く事ができず
少し離れた場所で佇んだ
今はまだアイツに会いたくなかった
冷静に話せる自信などなかったから
そうやってしばらく佇んでいると
「ねぇ、どこに食べ行く？」
「う〜ん、どこにしよっか」
後ろから
終業時間を迎えた他の課の社員がやって来た
...彼女達に混じって出れば
もしかしたら気付かれないかも
どうしてもアイツに会いたくなくて
そんな卑怯な考えが頭を過り
一瞬迷ったけど、実行する事にした
警備員のおじさんに挨拶する彼女達に続き
わらわらと一緒に通用口を後にする
変に緊張して、ドキドキしながら身を縮こませ
隠れるように歩いていたのに
「Aさん！」
すぐにアイツに見つかってしまった
ドクンッ...！
思わず足が止まる
「Aさん！」
再びアイツが私を呼んだ
「えっ...あれってモデルのチャンミン？」
「えっ、嘘！本物？」
私を取り囲む彼女達が騒ぎ出した
それでも、まるで固まってしまったかのように
顔を上げる事ができなかった
「ちょっとこっちに来るよ」
「えっ、なんで！
てゆーか私マジファンなんだけど///」
そう言ってはしゃぐ彼女達の声で
アイツがこっちへ歩いて来てるのがわかって
「・・・・」
「Aさん...」
アイツの声がすぐそばから聞こえてきた次の瞬間
「あっ...！」
私はその場から走って逃げ出した
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作者名：ami
| 作成日時：2015年3月28日 22時
