アイツが見てた事 ページ31
「行こっか？」
「はい」
大人しく私の後をついてくるアイツ
歩き出してしばらくすると
「あ、ちょっとコンビニに寄ってもいいですか？」
そう言ってコンビニに入っていった
私は特に用もないので
ガードレールに腰掛け待つ事に
ついつい忘れがちだけど
アイツは一応今イチオシの人気モデル
狭い店内、アイツに気付いた若い女の子二人組が
ヒソヒソ言いながら
アイツを遠巻きに見ているのが見えた
あ、話し掛けるのかな
女の子二人組がゆっくり近付き
アイツに声を掛けそうになった時
「何してるの？こんなところで」
私が声を掛けられた
この声は...
「斉藤さん」
目の前に立った斉藤さんにつられて
私も立ち上がる
「誰か待ってるの？」
「はい、そんなところです。
斉藤さんは今から仕事ですか？」
「うん、早出残業」
「そっか、お疲れ様です」
その時、斉藤さんの手が
ごく自然に私の方に伸びてきて
「ついてる」
「えっ...」
「睫毛」
私の頬についていた睫毛を取ってくれた
「あっ、ありがとうございます...」
「へぇ、意外に長いんだ」
取った睫毛をまじまじと見ている斉藤さん
恥ずかしいから止めて欲しい...
「あの、早く捨ててください///」
「え？なんで？宝物にしようかと思ったのに」
・・・は？宝物？
「...プッ、何て顔してるの？冗談だよ冗談(笑)」
え？冗談？
・・・やられた
完全に斉藤さんにからかわれて
マヌケ面をしているであろう私に
「やっぱ面白いわ竹内さんは、じゃあね(笑)」
そう言い残して
斉藤さんは駅へと歩いて行った
何なの一体...
小さくなる斉藤さんの背中に問いかける
アイツがその様子を
斉藤さんとのやり取りを全て見ていたなんて
思いもしなかった
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作者名：ami
| 作成日時：2015年3月28日 22時
