似合わない2 ページ10
「ここじゃなんだから...
外に行かない？」
そう言われて、キャンパス内にある芝生の上に
並んで腰を下ろした
以前Aさんと一緒にお弁当を食べた
あの中庭だ
あの日と同様、降り注ぐ春の日差しが暖かい
少し眩しく感じるその日差しに目を細めると
「あの噂ね...本当なんだ」
遠くを見つめた南川さんが、そう口にした
「一年の時に先生と親しくなってね、私から告白したの...」
「南川さんから？」
「うん...」
「そうなんだ...」
「もちろん先生には奥さんがいるって知ってたから、フラれるのを覚悟でね...。
でも先生は、僕も好きだよって私の気持ちを受け入れてくれて...あの時は嬉しかったな(笑)」
南川さんが少しだけ微笑んだ
「それからは、ダメだとは思いつつもどうしても止められなくて...。この間シム君に話したのももちろん宮部先生の事だよ？」
「うん...」
「まさか不倫相手だなんて思わなかったでしょ？しかも現役の大学教授と(笑)」
今度はクスクスと笑う南川さん
「・・・どうして」
「えっ...」
「どうして笑うの？泣きたきゃ泣けばいいのに...。南川さん、あの日と同じ顔してる」
「・・・・」
「自分がしてる事は間違ってるって、わかってるんでしょ？だからそうやって自虐気味に笑ってるのかもしれないけど...そんな笑い方は南川さんには似合わない」
そう、南川さんにそんな笑顔は似合わない
似合うのは
この暖かい春の日差しみたいに
一緒にいると思わず笑顔になるような
そんな暖かい笑顔
だから...
「似合わないよ？」
「シム君...」
あの日と同じように
僕を見つめる南川さんの瞳に
みるみる内に涙が溜まっていく
「いつも楽しそうに笑ってる南川さんが、僕は好きだよ？」
ボロボロと大粒の涙を零しながら
「うんっ...うんっ...」
何度も何度も頷く南川さんが切なくて
震える肩を
ごめんね、Aさん...
僕はそっと抱き寄せた
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作者名：ami
| 作成日時：2015年3月28日 22時
