あまりに小さくて ページ12
「南川さん、お待た・・・」
鞄を持って中庭に戻ると
数人の女の子が南川さんを囲んでいるのが見えた
何やってるんだろう...
僕に背を向けている彼女達の背後から
ゆっくり近付く
「この子なんて入学当時からずっと好きで
最近ようやく話せるようになったんだから」
「ね？リコ」
「うん...」
あ、あの子達は...
選択科目で一緒になる
他のクラスの女の子達だった
そんな彼女達を
怯えた目でじっと見つめ返す南川さん
明らかに友達なんかじゃない事がわかる
「まったく、不倫してるくせにシム君に近付くなんて図々しいのよ！」
「ホントホントー、信じられない」
「...ぁ」
きつい言葉で詰め寄る彼女達に
南川さんの顔が今にも泣きそうに歪んだ
「南川さん！」
僕はすかさず南川さんに駆け寄った
「あっ、シ、シム君...」
少しだけ震えた南川さんの声に振り返る彼女達
僕を見て、一斉に顔色を変えた
「あ、あの...シム君？」
南川さんを図々しいと罵った子が
話し掛けてきた
それを無視して南川さんの隣に並び
彼女達を見下ろす
「南川さんが不倫してるって
どうして言い切れるんですか？」
さっきまでの勢いをなくし
俯き黙り込む彼女達
「それに万が一不倫してたとして、それと僕と親しくしてる事と何の関係があるんですか？」
ただ気に入らないだけのクセに
モラルを振りかざして責めたりして
「僕は一緒にいて楽しいから南川さんと一緒にいるんだ。それをあなた達にとやかく言われる筋合いはない」
「シム君...」
隣から僕を見上げる南川さん
「行こ、南川さん」
その手を引いて
僕はその場を後にした
「ね、ねぇ、シム君」
「なに？」
気持ちが収まらず
グイグイ手を引いて歩く僕の後ろから
南川さんが話し掛けてきた
「よかったの？
シム君の事が好きな彼女達にあんな事言って」
「別にいい」
「・・・・」
「僕にとっては、彼女達より南川さんが大切だし、あんな事する人達とはこれ以上親しくしたくない」
そう、あんなイジメじみた事
僕は大嫌いだ
「...そっか」
「うん」
なかなか気が収まらなくて
相変わらずグイグイ手を引いて歩く僕の背中に
「...ありがとね(笑)」
嬉し涙を零しながらそう言った南川さんの声は
あまりにも小さくて
彼女の中に新たに芽生えた感情に
気付く事なんてできなかった
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作者名：ami
| 作成日時：2015年3月28日 22時
