何より誰より大切な ページ47
「ごめんねA、騙したりして。
チャンミンさんも、すみませんでした...」
全てはユウちゃんの考えた嘘、茶番だった
アイツに教えた私のシェアハウスも
親の転勤を理由に一人暮らしを始めるという
ユウちゃんの部屋探しも
全ては優しい...ユウちゃんの嘘だった
「一旦バイトに戻りますから、家で待ってて下さい」
そう言ったアイツが
夜になりようやく帰ってきた
素早く玄関まで迎えに行く
「大丈夫だった？衣装」
「すっごく怒られちゃいました...」
「そっか...」
そうだよね...
手を繋ぎ、向かい合って腰を下ろしたソファ
アイツがすぐに右手を伸ばしてきた
「ごめんなさい、Aさん。
たくさん不安にさせて...」
その手で優しく私の髪を撫でながら
眉毛を下げて謝ってくる
「もういいよ、チャンミン」
必死に私を求めてくれた
それだけでもう十分
「よくありません！
まだ、A...富永さんの事だって説明してないし」
「それなら聞いたよ？隼人から」
「え...」
「さっき電話があったの。アイツも大分反省してると思うから言うけどって、教えてくれた...。可愛いがってた犬に似てたんだね」
理由を聞いて、実にアイツらしくて
泣きながら笑った
「ごめんなさい、Aさん。
本当にごめんなさい...」
俯き、何度も何度も私に謝るアイツ
その拳に、うっすら血が滲んでいた
「これ、さっき怪我したの？」
膝の上で握られていた両手をそっと掴む
コクン...
アイツが小さく頷いた
よく見ると、ハーフパンツから覗く
細い脚も痛々しいくらい擦りむけていて
「...え」
気付いたら
思いきりアイツを抱き締めていた
「...危ない事しないで」
赤信号を無視して渡るなんて...
アイツにもしもの事があったらと想像したら
不安で堪らなくなった
「Aさん...」
私の背中にゆっくり回されたアイツの手
「本当に...本当に許してくれるの？」
震えるアイツの声
「うん...」
「じゃあ...
もう一度僕と、付き合ってくれる？」
「うん...」
「...僕の事、ホントに好きっ...？」
「うん、大好きっ...大好きだよ？」
「...ッ、A！」
泣きながら、しがみつくように私を
ぎゅっと抱き締めるアイツの腕
温かいぬくもり
「チャンミン...」
失くしてからじゃ遅い
何より、誰より大切なその愛しい温もりを
いつまでもアイツと二人
抱き締め合った
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作者名：ami
| 作成日時：2014年9月25日 15時
